あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
「勝手にサイズを合わせたわけじゃありません。昨日、眠ったあとでそっとつけただけです」

「つけただけって……」

「はい」

「はい、じゃないでしょう」

呆れたように言ったつもりなのに、自分の声が思ったより震えていて、私は唇を噛んだ。

恒一は身を起こし、私の左手をそっと取った。

長い指が、薬指のリングに触れる。

「驚かせるつもりはありませんでした」

「十分、驚いてる」

「でも、口で言うだけじゃ足りないと思ったんです」

そう言って彼は私の手の甲に口づけた。

昨夜の余韻を呼び起こすようなやさしい触れ方に、胸の奥が小さく疼く。

「美弥さん」

名前を呼ばれる。何度呼ばれても、そのたびに私は少しだけ弱くなる。

「子どもが欲しいなら、俺とちゃんと未来を作って」
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