あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
その言葉が、まっすぐに胸へ落ちてきた。

私は彼を見つめた。

冗談でも、勢いでもない。

甘い雰囲気に流された約束でもない。

恒一は、仕事の話をするときみたいに静かで、けれど絶対に揺らがない目をしていた。

「……未来」

「はい」

「そんな簡単に言わないで」

思わずそう言ってしまった。

「私は四十二歳よ。結婚だって、子どもだって、若い頃みたいに夢を見ていられる年齢じゃない。仕事もあるし、立場もあるし……あなたは三十五歳で、これからいくらでも選べるのに」

そこまで口にして、私は自分が泣きそうになっていることに気づいた。

本当は嬉しい。嬉しくてたまらない。

けれど嬉しいだけで飛びつけるほど、私は若くも無邪気でもなかった。

手を伸ばした先にあるものがあまりにも大きくて、あまりにも欲しくて、だからこそ怖い。
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