あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
恒一は私の言葉を黙って聞いていた。

途中で遮らず、急かさず、ただ真剣に。

そして私が黙ると、今度は彼がゆっくり口を開いた。

「簡単だと思ってません」

低い声が、静かな朝の部屋に溶ける。

「年齢のことも、仕事のことも、何も考えていないわけじゃない。美弥さんが簡単に頷けないことも分かってます」

彼の指が、私の薬指のリングをそっとなぞる。

「でも、だからって諦める理由にはならないでしょう」

私は息をのんだ。

恒一の目はまっすぐだった。

まるで、私が自分で閉めようとする扉を、当然みたいに開けてみせる人の目だった。

「俺は選べるからあなたを選ぶんです」

「……」

「若い女の子がいいとか、楽な恋がしたいとか、そんなふうに思ったことは一度もない」
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