あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
「では、今日からお願いする業務の概要を説明するわ」

「はい」

彼は真っ直ぐに私を見る。

その目が落ち着いていて、妙に居心地が悪い。

いや、居心地が悪いというより――見透かされそうで、少し困るのだ。

説明を終えると、彼は書類を閉じて静かに言った。

「大変そうですね」

「そう思う?」

「ええ。でも、高瀬部長なら回してしまうんだろうなと」

「買いかぶりよ」

「そうでしょうか」

言いながら、彼は立ち上がった。

そのとき、私が机の端に置いていたファイルが落ちかけた。

とっさに手を伸ばすより先に、恒一の手がそれを支える。

「あ……ありがとう」

「いえ。失礼しました」

その一連の動きがあまりにも自然で、私は少しだけ戸惑った。
< 9 / 67 >

この作品をシェア

pagetop