手を、つないで 〜ふたりの時間〜

4.航



『ほんとにちょっとだけ。でも遠回りさせちゃいました。すみません』

 聞いた瞬間、頭の中が真っ白になった。
 目の前の、笑う彼女が可愛すぎる。
 理性が飛びそうになって、抱きしめた。そうじゃなきゃ、かぶりついてめちゃくちゃにしそうだった。
 道1本分の遠回り。そんな時間でも、一緒にいたい。
「……あんまり、可愛いこと言うと……」
 耐えられない。大事にしたいのに。
 彼女の顔を見る。いきなり抱きしめて、怖がってないだろうか。
 見る限り、大丈夫そうだ。でも顔を見たら。
 引き寄せられる。潤んだ目。その唇に。
「……いい、ですか……?」
 彼女が頷く。なんのことか、ちゃんとわかってて、目を閉じた。
 唇に触れる。本能のまま深くしそうになって、なんとかとどまる。落ち着け。大事にするって決めたんだ。
 体を離すと、冷たい空気が入り込む。その淋しさは、つなぎ直した手のあったかさで埋まる。
「……そういうわがままは、もっと言っていいです」
 彼女が顔を上げる。ふわっと笑った。
「はい……」
 触れたい。抑えるために、歩き出す。
 でもゆっくり。俺も、1秒でも長く一緒にいたいから。



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