手を、つないで 〜ふたりの時間〜
少し酔っている。飲み過ぎたかな。
だから、かもしれない。もう少し彼と一緒にいたくて、わがままを言った。
「コンビニに寄ってもいいですか?」
駅から家までの間にコンビニはない。寄るなら、少し遠回りになる。
彼は笑って頷いてくれた。ちょっと心が痛む。ごめんなさい、買う物がある訳じゃないんです。
いつもの曲がり角を反対に。道を1本分、遠回り。彼が帰る時間もあるから、ちょっとだけ。
コンビニでは、ミネラルウォーターを買った。2本。
1本を彼に渡す。
「松永さんも結構飲んでましたよね。どうぞ」
彼もお酒は強い。私より強いんじゃないかな。だって今日は同じくらい飲んでるのに、彼は酔ってない。
「ありがとうございます」
受け取って、一口飲む。私も。
そして、家に向かう。もう着いてしまう。
「中森さん飲み過ぎましたか?大丈夫ですか?」
彼の声が優しい。
「大丈夫ですけど、飲み過ぎました」
笑ってごまかす。
「ほんとはコンビニ寄らなくても良かったんですけど、わがまま言いました。すみません」
「わがまま……?」
「もうちょっと長く、一緒にいたくて」
酔ってるから、恥ずかしい本音も言えてしまう。でも恥ずかしいからしゃべってごまかす。
「松永さんが帰る時間もあるし、ほんとにちょっとだけ。でも遠回りさせちゃいました。すみません」
つないでいた彼の手に力が入った。グイッと引き寄せられる。
抱きしめられる。ぎゅうっと。
「……あんまり、可愛いこと言うと……」
ぼそっと聞こえた。
少し力が緩まって、彼の顔が見える。
困ったような、笑ってる表情。目がとっても優しい。近付いてくるその目に、吸い込まれそう。
「……いい、ですか……?」
もうなんのことかわかる。
頷くと、彼は少し笑った。
目を閉じると、唇にやわらかい感触。
前よりも、少しだけ長く触れた。