手を、つないで 〜ふたりの時間〜
6.航
手首を見ると、ダークオレンジが光っている。ように見える。
このアームウォーマーが、これほど大事な物になるなんて思ってなかった。これがなかったら、耐えられずに、壊れていたかもしれない。
もう3週間、彼女に会えていない。
見かけてはいる。目も合う。微笑み合う。
メッセージは送り合ってる。
どうしても我慢できない時は、電話。ビデオ通話は、お互いに恥ずかし過ぎた。1分も保たずにカメラをオフ。その後は音声のみにしている。
最初の1週間は、俺だった。俺が仕事を調整できなくて、時間を作れなかった。
次の1週間はお互いに。案件が重なって、残業続き。上手く合わせられなくて、一緒に帰ることもできなかった。
今週は、彼女が出張でいない。地方に出ていて、帰ってくるのは来週の予定。だから、今週は見かけてもいない。
アームウォーマーを、外せなかった。洗う時以外は身に付けている。御守りみたいに。
何かを察した高井戸がちょっとからかってきたけど、睨んだら黙った。
彼女も猫の手首ウォーマーを着けていると言っていた。出張先だし、仕事中はさすがに外すけど、それ以外は着けているそうだ。お揃いじゃないけどそんな気がして、と言っていた。声だけでも可愛くて、目の前にいたら抱きしめるのに、と思った。
仕事はやっと調整できて、平日はともかく週末はなんとか空けられるようになった。
これで、彼女が帰ってくれば……という訳にもいかないことは知っている。
彼女と同じ部署の人が退社することになって、その引き継ぎで部署全体がバタバタしているからだ。落ち着くにはまだかかるだろう。彼女も当然忙しい。その引き継ぎのために出張に行っているのだ。帰ってきたからといって、時間が空くとは限らない。
一息つく、くらいならできるだろうか。
期待すると後が怖いから、期待しないように。
でもできることがあれば。おいしいものを食べに行くとか、景色のいいところに行くとか。出かけるのは疲れるからダメか……近場で、夜景の綺麗なところとか……神社仏閣……温泉……。いろいろ考える日々を送った。