手を、つないで 〜ふたりの時間〜
部屋に入って、玄関でへたり込んだ。
あああ、思わずしちゃった。どうか彼がはしたないって思いませんように。
土曜日。お家デート。
お泊まり。するかもしれない。しないかもしれない。
お泊まりしたとしても、なにもないかもしれない。
それでも。
出張前、早苗ちゃんとのランチに、偶然会った平野さんも一緒になった日があった。
「で、その後どう?人生初彼氏とは」
「どう、とは……」
「進展あった?」
「あ……りました」
へえーと早苗ちゃんが反応した。
「あったんだ、進展」
「あれ、三上さんも聞いてないの?」
「なんか幸せそうだったから、聞くのは後でいっかって思って」
「へー幸せそうかあ」
「もうダダ漏れです」
2人はうふふと笑った。私は恥ずかしくてうつむいた。
「じゃあ、中森さんも『オトナ』になったってことか〜」
「あ、それは多分まだだと思います」
「なんで三上さんが答えるの」
「だってわかりますもん。平野さんが言う『オトナ』になったんなら、こんな初々しい雰囲気じゃないと思います」
「えーどうなの中森さん、合ってる?」
2人が迫ってくる。『オトナ』って……キスのことじゃないよね。
「……多分、合ってます……」
「ほら〜」
「あらま」
2人がにまにまし出す。
「大事にされてるんだね〜」
「平野さんも大事にされてたんでしょう?」
「んーまあね。でも、大事にされ過ぎて、なにもなくて。3ヶ月も」
3ヶ月……彼と私は、付き合い始めてもうすぐ2ヶ月だ。
「最終的には、自分から言った」
「自分から。えーキスしたいとか?」
「まあ、そういうことかな。とにかく、思ってることは言わないと。相手には伝わらないから」
触ってください、って、前に言ったことある。そうか。そういうことか。
だから、言ってみた。行動してみた。
私はもう一歩進みたい。彼と、深いところでつながりたい。そう思ってることを、わかってほしい。
伝わった、と思う。
「……掃除、しなきゃ」
土曜日に向けて、がんばろ。