手を、つないで 〜ふたりの時間〜

10.5 三上早苗



 ある月曜日の朝。
 出社したら、エレベーターで高井戸さんと一緒になった。
「おはようございます」
「おはようございます」
 普通に挨拶を交わす。
 朝には珍しく、ウチの社の人間は私と高井戸さんだけ。
 エレベーターを降りた後、方向が同じだから、自然と一緒になる。
 2人同時に、ピタッと止まる。

 前方に、茉歩と松永さんがいた。
 親しげに話してて、その後顔を寄せて何かを話した後、笑った。

 なにあれ。笑顔の冷製鉄仮面。いや鉄仮面に笑顔とかないか。
「まっほー可愛過ぎるだろ」
「うわ、初めて見た。あいつのあんな顔」
 ほとんど同時に呟く。
 そういえば、高井戸さんは知ってるんだっけ。茉歩に聞いた気がする。
 良かった、相手が高井戸さんで。違う人ならごまかさなきゃいけないところだった。
 目が合った。同時ににっこり笑う。
 いいですねえ、幸せで。
 あの2人、雰囲気が少し変わった。ドキドキの初々しさが取れて、こなれてる。それはきっと、2人の時間を積み重ねたからで、いい時間を過ごしてる証拠だ。
 高井戸さんも同じことを感じているらしかった。

 茉歩は、私達に気付かずに部屋に入っていった。
 それを見送る鉄仮面。なんか新しいあだ名が必要かな。
 鉄仮面がこちらを見て、ビクッとした。
 私達のにこにこ笑顔に怯えてる。ほうほう、それもおもしろいですな。
「松永さん、おはようございまーす」
 茉歩を追いかけて部屋に入った。後ろから鉄仮面の小さい声が聞こえたけど、なんて言ったか聞こえなかった。

 
「まっほーおはよー」
「おはよう」
 茉歩はいつもと変わらない挨拶をする。私達が見てたことには気付いてないんだもんね。
「なーんかいいことあるかなー」
 歌ったら、顔がにまった。茉歩がそれを見て固まる。あ、見てたことに気付いたか。
「あの、早苗ちゃん」
「んーん」
 首を振って、茉歩の肩を叩く。
 いいの、言わなくて。
 幸せなんだね、まっほー。
 私まで嬉しくなっちゃうよ。
 良かったね、まっほー。
 まっほーだから、三無い冷製鉄仮面もあんな顔になるんだろうな。あんな顔になるから、まっほーも可愛くなるんだろうな。
 いいな、うらやましい。そんな思いを込めて、もう一度茉歩の肩を叩く。

 どうか、この2人が、幸せなままでいられますように。



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