手を、つないで 〜ふたりの時間〜
ホームの1番前。たくさんの人の中、彼女だけに色がついているように見える。俺を待っていてくれているんだと思うと、愛おしさが爆発しそうになる。
彼女は俺を見つけて、ぱっと微笑んだ。ああもう抱きしめたい。
「すいません、お待たせしました」
5分遅れた。メールの返事に手間取ってしまった。
「私も今来たところです。お疲れ様です」
ひとまず電車に乗る。1番前の車両、運転席の後ろ。混んでいる。壁際に彼女を立たせて、カバーする。距離が近い。俺の心臓の音が聞こえるんじゃないだろうか。
「大丈夫でしたか?お仕事。無理させてしまったのでは……」
「大丈夫です」
間近で彼女が俺を見上げる。打ち上げの帰りのことを思い出してしまう。
触れたほっぺた。抱き寄せた背中。
唇は、やわらくて。
『好きです……』
言われた瞬間、体中の血が逆流した。
そのまま全てを奪ってしまいそうで、怖くなった。
大事にしたい。だから、離した。
『人生初彼氏』
光栄だ。嬉しい。
そして思う。『人生最後の彼氏』になりたい。
彼女が和やかに笑っている隣にいたい。いつまでも。
そのためには。模索中だ。