桐生家の四兄弟と私〜義兄弟に囲まれてます〜

リビングへ向かい、
持っていた破片をゴミ箱の横に置く。

ガシャン、と音が響いた。

その音に反応して、ソファに座ってゲームしている颯太が顔を上げた。

「あ、姉ちゃん」

手には銃型のコントローラー。

リビングの大きなテレビ画面のゾンビに向かって、撃っているところらしい。

その呑気な様子に、少しだけ苛立ちを覚えてしまう。

「ねぇ、さっき、上から派手な音聞こえなかった?」

「ああ」

颯太は一度だけ答えると、すぐ画面に視線を戻した。

「聞こえたけど、聞こえなかったことにした。
……面倒くさそうだったから」

「普通に本音出てるよ!まったく……」

呆れてため息をつく。

すると颯太は、画面から目を離さないまま言った。

「まあまあ、落ち着けって」

その横顔を見ていて、ふと思い出した。

……あ、そうだ。

「ねぇさっき、私の背中に変な紙貼ったでしょ!なんであんなことするの!」

「……若気の至りってやつだろ」

「それで済んだら、なんでも許されちゃうじゃん」

その時。

画面の中でプレイヤーがゾンビに囲まれ——

GAME OVER。

「……あーあ」

颯太がぼそっと言う。

「姉ちゃんがうるさいから」

「何よそれ!」

颯太は何も言わず立ち上がると、銃型コントローラーをこちらに向けた。

そして、撃つ。

カチ、カチ。

「ちょっと、やめてよ!」

カチ、カチ。

「実害ないけど、なんかイヤ!」

「……」

カチ、カチ。

「やめてってば!
……前はもっと素直で可愛かったのに」

颯太の動きが、ぴたりと止まった。

「……俺さ」

颯太は顔を伏せたまま言う。

「姉ちゃんに可愛いって言われて、嬉しかったことなんかないよ……」

——あ。

言いすぎたかも。

「っ颯太……」

次の瞬間。


「ふん……りあのバカヤロウ!」


颯太はべーっと舌を出すと、コントローラーをソファに放り投げた。
そのまま、だっとリビングを飛び出していく。

「あ、ちょっと!」

足音が遠ざかる。

「……まったく。反抗期なんだから」

腹は立つ。

でも。
颯太がああいう態度を取るのは、たぶん私にだけだ。

——まぁ、しょうがないか。

そう思いながら、小さく息を吐く。
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