桐生家の四兄弟と私〜義兄弟に囲まれてます〜



……。


頬に、何かが触れている。


……あれ、私、泣いてる?


そんなはずない。

だって私は――


「ん……」


ゆっくり目を開ける。


見慣れた天井。

……あ、私の部屋だ。 


「お、姉ちゃん起きたか」


声に視線を向けると、目の前に颯太の顔。

制服姿の颯太が、ベッド脇の椅子に座り、
ポテチを食べながら私を覗き込んでいた。


「っ颯太!? なにこれ!?」


頬に手を当てる。

……ポテチの食べかす。


ズキッ。

「っ頭痛い……」

「無理すんなって。姉ちゃん昨日酔って暴れて大変だったんだからな」

「え!?」

昨日のことを思い出そうとする。

敦兄とご飯を食べたところまでは覚えている。
その先が、どうしても思い出せない。

――あれ。

隼人の顔が、ふっと浮かんだ。

なんでだろ。

「姉ちゃんさ、間違えて昌枝ちゃんの酒、飲んだんだろ」

「っ昌枝さん、でしょ……」

頭を押さえる。

颯太は気にせずポテチをばりばり食べている。
片手では私の少女漫画をめくっていた。

「つまんねえな、この主人公。こんな男のどこがいいんだよ」

「っベタベタした手で触らないでよ!」

「はいはい」

颯太は漫画をぽいっとベッドに放ると、
ちらっと壁の時計を見た。

「あ、俺そろそろ行かなきゃ」

そして少し間を置いてから、私を見る。

「……あ、姉ちゃんさ。隼人兄に気をつけろよ。ゲロまみれにされて、あれ絶対キレてるから」

「え!?」

どういうこと。

焦る私の頭に、
昨日の記憶がぼんやり浮かぶ。

「あ……」

「ほら、これ」

颯太がポテチを二枚つまんで、
くちばしを作るみたいに私の口に突っ込んだ。

「ほふた!?」

「ははっ、可愛くなったじゃん」

そう言ってから颯太は立ち上がる。

「じゃ、行ってきまーす」

逃げるように部屋を出ていった。

仕方なくポテチを噛む。
ごくり、と飲み込む。

……まったくあの子は。
ていうか、朝からポテチ!?

……いや、それよりも――

隼人。

「っ」

私は慌ててベッドから起き上がった。
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