桐生家の四兄弟と私〜義兄弟に囲まれてます〜




部屋を出ると、ちょうど隣の部屋のドアが開いた。

出てきたのは学ラン姿の隼人だった。
兄たちとは違う制服。

着崩しているのに、隙がない。

心の準備ができていなくて、足が止まってしまう。

「っ……」

隼人は何も言わず、じっとこちらを見る。

そしてそのまま踵を返し、階段の方へ向かった。

無言のままだけど、
再会した時のあの冷たい目とは、違う気がした。


「待って! 隼人!」


隼人の足が、ぴたりと止まる。


「……なに」


振り向いた隼人に、私は慌てて駆け寄った。
 

ズキッ。 

まだ頭が痛む。

「っごめん……。昨日、迷惑かけちゃったみたいで」

隼人は黙ったまま、私を見る。

……次の言葉を待っているみたいだ。

「えーと……実は、あんまり覚えてないんだけど……」

顔を上げる。

「隼人に……」

隼人の目が、わずかに揺れた。


「吐いちゃったみたいで……!本当にごめんなさいっ」 


ぺこり、と頭を下げる。

少しの沈黙。


「……そこかよ、謝るとこ」


「え?」

隼人は小さく息を吐いた。
少しだけ呆れたみたいに、でもどこか安堵したように。

「……いい」

そう言って、また階段の方へ向く。

「あ、隼人!」

隼人は足を止めたまま、振り返らない。

「……昨日のこと」

「え?」

「覚えてないなら、別にいい」


少しだけ間があく。


「……無茶すんな」


そのまま隼人は、階段を下りていった。


……なんでだろう。

少しだけ、嬉しかった。
< 33 / 36 >

この作品をシェア

pagetop