桐生家の四兄弟と私〜義兄弟に囲まれてます〜
部屋を出ると、ちょうど隣の部屋のドアが開いた。
出てきたのは学ラン姿の隼人だった。
兄たちとは違う制服。
着崩しているのに、隙がない。
心の準備ができていなくて、足が止まってしまう。
「っ……」
隼人は何も言わず、じっとこちらを見る。
そしてそのまま踵を返し、階段の方へ向かった。
無言のままだけど、
再会した時のあの冷たい目とは、違う気がした。
「待って! 隼人!」
隼人の足が、ぴたりと止まる。
「……なに」
振り向いた隼人に、私は慌てて駆け寄った。
ズキッ。
まだ頭が痛む。
「っごめん……。昨日、迷惑かけちゃったみたいで」
隼人は黙ったまま、私を見る。
……次の言葉を待っているみたいだ。
「えーと……実は、あんまり覚えてないんだけど……」
顔を上げる。
「隼人に……」
隼人の目が、わずかに揺れた。
「吐いちゃったみたいで……!本当にごめんなさいっ」
ぺこり、と頭を下げる。
少しの沈黙。
「……そこかよ、謝るとこ」
「え?」
隼人は小さく息を吐いた。
少しだけ呆れたみたいに、でもどこか安堵したように。
「……いい」
そう言って、また階段の方へ向く。
「あ、隼人!」
隼人は足を止めたまま、振り返らない。
「……昨日のこと」
「え?」
「覚えてないなら、別にいい」
少しだけ間があく。
「……無茶すんな」
そのまま隼人は、階段を下りていった。
……なんでだろう。
少しだけ、嬉しかった。