桐生家の四兄弟と私〜義兄弟に囲まれてます〜
「あ、隼人」
颯太の呼びかけに、廊下の影ーー
隼人が、足を止める。
「……呼び捨てすんな」
鋭い視線。
颯太はわざとらしく肩をすくめた。
「はいはい、隼人兄」
「おい、隼人。お前、また朝までどこにーー」
俊の手が肩に触れる前に、隼人が払い落とす。
静かな音。
空気が、一瞬で冷える。
「……りあ、帰ってくるってさ」
敦の声が、間に落ちる。
その言葉に、
隼人の目がほんの一瞬だけ揺れた。
「……あっそ」
それだけ言って、隼人は背を向けた。
足音が遠ざかる。
リビングに残された三人は、誰もすぐには口を開かなかった。
……本当、素直じゃねーの。
隼人の背中を見送りながら、敦は小さく息を吐く。
りあが、帰ってくるーー。
その事実だけで、なぜか胸が落ち着かない。
誰も気づかないまま、何かが少しずつ動き始めていた。