桐生家の四兄弟と私〜義兄弟に囲まれてます〜



「あ、隼人」


颯太の呼びかけに、廊下の影ーー
隼人が、足を止める。


「……呼び捨てすんな」


鋭い視線。

颯太はわざとらしく肩をすくめた。

「はいはい、隼人兄」

「おい、隼人。お前、また朝までどこにーー」

俊の手が肩に触れる前に、隼人が払い落とす。

静かな音。

空気が、一瞬で冷える。


「……りあ、帰ってくるってさ」


敦の声が、間に落ちる。

その言葉に、
隼人の目がほんの一瞬だけ揺れた。


「……あっそ」


それだけ言って、隼人は背を向けた。

足音が遠ざかる。

リビングに残された三人は、誰もすぐには口を開かなかった。


……本当、素直じゃねーの。


隼人の背中を見送りながら、敦は小さく息を吐く。
 

りあが、帰ってくるーー。


その事実だけで、なぜか胸が落ち着かない。


誰も気づかないまま、何かが少しずつ動き始めていた。
< 5 / 36 >

この作品をシェア

pagetop