冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした

2. 見合い相手・三浦恒一郎

見合い当日。

鏡の前に立った私は、何度目か分からないため息をついた。

淡い桜色の着物。

母が「こういう場なんだから、ちゃんとしなさい」と張り切って用意したものだ。

上品で華やかすぎず、年齢相応に見える色だと思う。

思うのだけれど、普段スーツしか着ない私にはどうにも落ち着かない。

「由真、帯、曲がってない?」

「大丈夫よ。さっきから五回は見たわ」

背後で母が満足そうに頷いた。

「きれいよ。やっぱりあなた、和装も似合うわね」

「そうかな……」

鏡の前の私を見ても、そんな気はしない。

「そうよ。ほら、背筋伸ばして。相手の方、すごくちゃんとした方なんだから」

「お母さん、その言い方だと私がちゃんとしてないみたい」

「あなたはちゃんとしてるけど、恋愛に関しては心配なの」
< 12 / 108 >

この作品をシェア

pagetop