冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
母の言葉は正しい。

正しすぎるくらいだ。

私だって分かっている。

三浦さんは良い人だ。

優しくて、大人で、未来を語ってくれる。

なのに返事ができない。

喉の奥がつまって、うまく息ができない。

「由真?」

「……少し、考えさせて」

「もちろんよ。でも、逃げちゃだめよ」

逃げちゃだめ。

その言葉が胸に重くのしかかった。

「うん」

「もう子どもが欲しいとか、家庭を持ちたいって思ってるなら、現実を見ないと」

「分かってる」

電話を切ってからも、私はしばらく動けなかった。

スマホの画面は暗くなっているのに、そこから目を逸らせない。

もう逃げられない。

穏やかな未来が、目の前に差し出されている。

子どもを望む気持ちも、家庭を持ちたい願いも、全部受け止めてくれる相手がいる。

それでも、瞼を閉じると浮かぶのは圭太さんの顔だった。
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