冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
まっすぐすぎる問いに、息が止まる。

結婚したい。

そう答えるべきなのに。

「……穏やかな方です」

「そんなことは聞いていない」

「子どものことも考えてくださって」

「朝倉」

名前を呼ばれた瞬間、背筋が震えた。

「質問に答えろ」

どうしてそんな声を出すの。

どうして今さら、そんなふうに私に迫るの。

「私は……」

言葉が続かない。

三浦さんは優しい。ちゃんと家庭を思い描ける人だ。

結婚するなら、ああいう人がいい。そう思ったはずなのに。

圭太さんを前にすると、全部が揺らいでしまう。

「社長、私はもう二十九です」

気づけば、違う言葉が零れていた。

「……それがどうした」
< 31 / 108 >

この作品をシェア

pagetop