冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
「友人はみんな結婚して、子どももいて……私も、欲しいんです。家庭とか、子どもとか、そういう普通の幸せが」

圭太さんの目がわずかに揺れる。

「だから、もう」

もう、終わりにしなくちゃいけない。

あなたを好きなままじゃだめなんです。

そう言いたいのに、声が震えてしまう。

「もう、片想いばかりしていられないんです」

言ってしまった。

はっとして唇を押さえる。

今、何て。

自分で何を口走ったのか分からなくて、血の気が引いた。

「片想い?」

圭太さんが低く繰り返す。

「ち、違っ……」

「誰にだ」

逃げ場のない声だった。

「社長、それは――」

「誰に片想いしている」

視線が逸らせない。

苦しい。怖い。なのに、目を離せない。
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