冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
「どうして?」

圭太さんがわずかに笑う。

でも、その目はまったく笑っていなかった。

「おまえ、本気で気づいていないのか」

ざわ、と胸の奥が揺れた。

今まで見たことのない圭太だった。

冷静でも、淡々としてもいない。ただ、何かを押し殺すことに限界が来ている顔。

「今日はもう仕事は終わりだ」

「え?」

「夕食に行く」

「……夕食?」

「そうだ」

「でも、私は部屋で――」

「俺が行くと言っている」

有無を言わせない口調。

けれどそれは、いつもの命令とはどこか違っていた。

圭太さんは立ち上がると、私を見下ろした。

「朝倉」

「はい……」

「その話の続きは、二人で聞く」

胸が激しく打つ。

まるで、この夜が何かを変えてしまうと告げられたみたいに。

私はただ、動けないままその人を見上げていた。
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