冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
「何を飲む」

「軽いもので……」

「分かった」

私には甘めのカクテル、圭太さんにはウイスキー。

グラスが置かれても、私はすぐには口をつけられなかった。

「緊張してるな」

「……してます」

「由真らしくない」

「圭太さんのせいです」

「そうか」

少しだけ笑った気配がして、私は余計に落ち着かなくなった。

しばらく黙ったまま夜景を眺める。

このまま時間が止まればいいのに、と思う。

でも止まるわけがない。明日になれば、また現実が来る。

三浦さんのこと、婚約のこと、将来のこと。

全部が私を待っている。

そう思った瞬間、胸が苦しくなった。

「由真」

「はい」

「その男といる時、おまえは俺を忘れられるのか」

 まっすぐすぎる問いに、答えられない。

「……分かりません」

「だろうな」
< 41 / 108 >

この作品をシェア

pagetop