冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
「何がって……」

思わず声を潜める。

「昨日のことが、なかったみたいに振る舞うんですか」

圭太さんは少しだけ黙った。

それから、私の方を見ないまま答える。

「会社では社長と秘書だ」

そこで初めて、圭太さんが私を見た。

「だが、仕事以外の時は恋人同士だ」

その視線の熱に、私は言葉を失った。

昨夜を境に、確実に何かが変わっている。

本社に戻ると、空気はいつもと何も変わらなかった。

社員が行き交い、電話が鳴り、資料の受け渡しが飛び交う。

昨日までと同じ日常。

なのに、私の中だけがまるで別の世界にいるみたいだった。

「お帰りなさいませ、社長」

「出張お疲れさまでした、朝倉さん」

「ありがとうございます」
< 49 / 108 >

この作品をシェア

pagetop