冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
いつものように応対しながらも、私は妙に落ち着かなかった。

圭太が自分の社長室へ入る背中を見送るだけで、胸が高鳴る。

落ち着いて。

何も変わっていない。

私は秘書で、圭太は社長。

そう言い聞かせて席についたところで、内線が鳴った。

「はい、秘書室です」

『社長室へ』

それだけで切れる。

短すぎる。いかにも圭太さんらしい。

私は深呼吸をひとつしてから、必要な書類を持って社長室へ向かった。

「失礼します」

「入れ」

ドアを閉めると、圭太さんはデスクではなくソファに座っていた。

そして私を見たまま言う。

「鍵を閉めろ」

「社長室の、ですか?」

「そうだ」

「で、でも」

「誰か来たら困るか」
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