冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
「……はい」

「昼休みにもう一度来い」

「え?」

「聞こえなかったか」

「聞こえましたけど……どうしてですか」

「会いたいからだ」

あまりにも率直で、私は何も言えなくなった。

その日から、圭太さんは本当に別人のようだった。

もともと業務連絡は多かった。

秘書として、社長室に呼ばれる回数が多いのも珍しくない。

でも今は明らかに違う。

『朝倉、コーヒーを』

『はい、すぐにお持ちします』

持っていけば、

「そこに置け」

そう言ったあと、書類ではなく私の手を取る。

『社長……誰か来ます』

『来ない』

短く答えて、そのまま指先に口づけられた時には、本気で膝が震えた。

また別の日は。

『この資料、確認を』

呼ばれて社長室へ行くと、資料の確認は一分で終わる。

『以上だ』

『え? それだけですか』
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