冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
ホテルのラウンジに座った瞬間、浮かんだのは圭太さんの顔だった。

あの夜、名前を呼ばれたこと。

抱き寄せられたこと。

低い声で、「他の男の元には行かせない」 と告げられたこと。

「っ……」

涙がまたこぼれる。

前が見えないまま走って、角を曲がったところで、ようやく足が止まった。

もう限界だった。

街路樹のそばに立ち尽くし、肩で息をしながら顔を覆う。

「どうして……」

どうして私は、あんなに優しい人を前にして、それでも別の男の名前を呼んでしまうのだろう。

どうしてちゃんと前に進めないのだろう。

どうしてこんなにも、圭太さんを好きなままなのだろう。

「由真」

その声が聞こえた瞬間、私は息を呑んだ。

信じられなくて、ゆっくり顔を上げる。
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