冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
少し離れた街灯の下に、一条圭太が立っていた。

黒いコートのまま、息も乱さずに、まっすぐ私を見ている。

「圭太、さん……」

どうしてここに。

そう思うのに、口から出たのはその名前だけだった。

圭太は迷わず近づいてくる。

「走るな」

低く叱るみたいに言われて、私はもう駄目だった。

抑えていたものが全部崩れて、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。

「だって……」

「泣くな」

「無理です……」

「由真」

その声が、優しすぎる。

圭太の顔を見たら、もう何も取り繕えなくなった。

強がりも、遠慮も、全部どうでもよくなる。

「好きなんです」

気づけば、声が零れていた。

「……圭太さんが」

言ってしまった。

もう隠しようもないほど、はっきりと。
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