冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
「でも、もう無理だ」

真っ直ぐ見つめられて、呼吸が止まる。

「おまえが他の男の前でそんな顔をして、結局俺の名前を呼ぶなら、もうきれいごとは言えない」

「圭太さん……」

「俺もずっとおまえだけを見ていた」

その一言が、胸の奥にまっすぐ落ちた。

「三年、毎日だ。朝の顔も、疲れた顔も、怒った顔も、笑った顔も、全部見てきた」

低い声が、ひとつずつ私の中へ染み込んでくる。

「仕事ができるところも、人のために自分を後回しにするところも、無理してるくせに大丈夫だと言うところも」

「……そんなの」

「全部好きだ」

街の音が遠のく。

世界が、今だけこの人の声しか持っていないみたいだった。

「おまえが淹れる珈琲が好きなのも、秘書として優秀だからだけじゃない。おまえがそこにいるのが当たり前になりすぎて、気づけば毎日目で追っていた」

もう、涙が止まらない。
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