冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
「三浦さん……」

「正直、残念です」

その言葉が痛い。

「でも、曖昧なまま進むよりよかった」

私は何も言えなくなる。

本当に最後まで、この人は大人だった。

「一条社長」

三浦さんが立ち上がる。

「由真さんを泣かせないでください」

その言葉に、圭太も立ち上がった。

「約束します」

「……なら、安心です」

二人は短く会釈を交わした。

私は慌てて立ち上がる。

「三浦さん、本当に……」

「いいんです」

やさしく遮られる。

「ちゃんと幸せになってください」

その一言に、私はとうとう目元が熱くなった。

「はい……」

三浦さんはそれ以上何も言わず、静かに社長室を出て行った。

ドアが閉まる音がして、ようやく張り詰めていた空気が少しだけゆるむ。

私はその場に立ったまま、息を吐いた。
< 89 / 108 >

この作品をシェア

pagetop