冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
「勢いで言っているわけじゃない」

「……はい」

「出張の夜も、本気だった。だが、あれだけでは不安にさせると思った」

私は小さく息を呑む。

「不安、でした」

「だろうな」

「嬉しかったです。でも同時に、あの夜だけの感情だったらどうしようって、少しだけ怖かった」

「そう思わせたなら悪かった」

圭太さんはそう言って、私の手を取った。

長い指が、指先まで包み込むみたいに触れる。

「結婚も、家庭も、子どもも、全部本気で望んでいる」

その言葉を、私はずっと待っていたのかもしれない。

「社長と秘書だから、とか。立場が違うから、とか。そういうことを全部越えても、ですか」

「越える」

迷いのない返答だった。

「越えてでも、おまえといたい」

喉の奥が熱くなる。

何度も欲しかった言葉なのに、実際にこうしてもらうと涙が出そうになる。
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