ポンコツ執事なのに、お嬢様に溺愛される
数日後。白鷺家の本邸に、ついにあの男が直接乗り込んできた。
天城家次期当主、天城朔春。
浬の情報工作によって主要な流通ルートをズタズタにされ、社会的な信用も崖っぷちまで追い詰められた彼は、以前の余裕に満ちた態度を完全に失っていた。
高級なスーツの襟元は僅かに歪み、その瞳には狂気的な焦燥がギラギラと張り付いている。
「ミア! 何処だ、ミア!!」
本邸の厳かなエントランスホールに、朔春の怒号が響き渡る。
普段ならアキラが、あるいはケイゾウの指示で屋敷の使用人達が彼を丁重に迎えるか、あるいは宥めるはずだった。
しかし、今の白鷺家の主導権は、完全にミアとナギサの側にある。
大階段の上から、ゆっくりと見下ろすように姿を現したのは、ミア。そしてその斜め後ろにぴったりと控えるナギサとルナ。
さらには、階段の踊り場に影のように控える、ナオとカリンの姿もあった。
「騒々しいわね、朔春さん。白鷺の屋敷をどこの泥泥の取引所と勘違いしているのかしら?」
ミアは冷徹な、しかし最高に美しい笑みを浮かべて朔春を見下ろす。
「お前……っ! よくも俺の邪魔を……! あの佐倉のガキと組んで、我が家のルートを荒らしたのはお前達だな!? アキ兄はどうした、あの人は何をしている! 俺との契約を忘れたわけではあるまい!」
朔春が階段を駆け上がろうと、一歩を踏み出したその瞬間。
シュッ、と空気を切り裂く音がして、朔春の靴の僅か数センチ手前の床板に、銀色のペーパーナイフが深く突き刺さった。
「ひっ……!?」
朔春が短い悲鳴を上げて飛び退く。
ナイフを放ったのは、階段の途中に立つナオだった。彼はいつも通りの飄々とした笑みを浮かべながらも、その佇まいは完全にアキラの呪縛から解き放たれ、新しい『主』のために牙を剥く獣のそれだった。
「おっと、すみませーん。手が滑っちゃって。……でも天城さん、そこから先は『ミアお嬢様のテリトリー』なんで。それ以上近づくと、次は手じゃなくて足が滑って、あんたの首筋にこれが刺さるかもしれないよ?」
「き、貴様……アキラの犬の分際で、俺に刃を向けやがるのか!?」
「生憎、そのアキラ様は不慮の事故で寝込んでてさ。今の俺達は、ミアお嬢様の専属補佐官なんですよ。カリン、そうだよね?」
ナオの言葉に、隣に立つカリンが静かにスカートの裾を持ち上げ、その太ももに仕込まれた無数の暗器をチラリと覗かせた。
冷徹極まりない彼女の視線だけで、朔春の背筋に凍りつくような恐怖が走る。
天城家次期当主、天城朔春。
浬の情報工作によって主要な流通ルートをズタズタにされ、社会的な信用も崖っぷちまで追い詰められた彼は、以前の余裕に満ちた態度を完全に失っていた。
高級なスーツの襟元は僅かに歪み、その瞳には狂気的な焦燥がギラギラと張り付いている。
「ミア! 何処だ、ミア!!」
本邸の厳かなエントランスホールに、朔春の怒号が響き渡る。
普段ならアキラが、あるいはケイゾウの指示で屋敷の使用人達が彼を丁重に迎えるか、あるいは宥めるはずだった。
しかし、今の白鷺家の主導権は、完全にミアとナギサの側にある。
大階段の上から、ゆっくりと見下ろすように姿を現したのは、ミア。そしてその斜め後ろにぴったりと控えるナギサとルナ。
さらには、階段の踊り場に影のように控える、ナオとカリンの姿もあった。
「騒々しいわね、朔春さん。白鷺の屋敷をどこの泥泥の取引所と勘違いしているのかしら?」
ミアは冷徹な、しかし最高に美しい笑みを浮かべて朔春を見下ろす。
「お前……っ! よくも俺の邪魔を……! あの佐倉のガキと組んで、我が家のルートを荒らしたのはお前達だな!? アキ兄はどうした、あの人は何をしている! 俺との契約を忘れたわけではあるまい!」
朔春が階段を駆け上がろうと、一歩を踏み出したその瞬間。
シュッ、と空気を切り裂く音がして、朔春の靴の僅か数センチ手前の床板に、銀色のペーパーナイフが深く突き刺さった。
「ひっ……!?」
朔春が短い悲鳴を上げて飛び退く。
ナイフを放ったのは、階段の途中に立つナオだった。彼はいつも通りの飄々とした笑みを浮かべながらも、その佇まいは完全にアキラの呪縛から解き放たれ、新しい『主』のために牙を剥く獣のそれだった。
「おっと、すみませーん。手が滑っちゃって。……でも天城さん、そこから先は『ミアお嬢様のテリトリー』なんで。それ以上近づくと、次は手じゃなくて足が滑って、あんたの首筋にこれが刺さるかもしれないよ?」
「き、貴様……アキラの犬の分際で、俺に刃を向けやがるのか!?」
「生憎、そのアキラ様は不慮の事故で寝込んでてさ。今の俺達は、ミアお嬢様の専属補佐官なんですよ。カリン、そうだよね?」
ナオの言葉に、隣に立つカリンが静かにスカートの裾を持ち上げ、その太ももに仕込まれた無数の暗器をチラリと覗かせた。
冷徹極まりない彼女の視線だけで、朔春の背筋に凍りつくような恐怖が走る。