ポンコツ執事なのに、お嬢様に溺愛される
――直後。
ガタ、と音がして、ついに登り詰めたレールの先が途切れる。
「うわあああああっ、ちょっと待ってマジで高い――っ!?」
「きゃああああああっ!!」
鼓膜を引き裂くような絶叫と共に、ジェットコースターが重力から解き放たれ、一気に垂直に近い角度で急降下した。
内臓がふわりと浮き上がるような、凄まじい浮遊感。
猛烈な風の刃が二人の髪を乱暴に攫っていく。
上下左右の視界が滅茶苦茶に揺れ動き、重力とスピードの暴力の中で、恐怖の悲鳴と純粋な笑い声がマーブル模様のように入り混じる。
「ナギサ! 顔! 顔が凄いことになってるわよ!」
「 喋ってる余裕あるならちゃんと前見てください!! 舌噛みますよ!」
「無理っ、ふふっ、速すぎて息が……っ、あはははっ!」
レールに沿って激しい急旋回。
そこからの予測不能な連続急降下。
身体が右へ左へと派手に振り回されるたび、限界突破した二人の声が、夕闇の始まりを告げる夜空へと溶けていく。
車輪とレールが擦れ合う音に笑い声も叫び声も掻き消されているはずなのに、どうしてか二人だけの会話は聞こえる。
目を開けてる余裕なんて無くても笑っているのだと、隣にいれば感じるものがあった。
そして、数分後。
ようやく減速し、完全に停止したライドから這い出るようにして降りたナギサは、ふらりと近くの壁へ手をついた。
魂が口から半分出掛かっている。
「……生きてる………」
「もう、大袈裟ねぇ。死ぬわけないじゃない」
ミアはまだ興奮冷めやらぬ様子で、頬を紅潮させながら楽しそうに笑い、ナギサの隣へと並んだ。
その表情は、言葉の弾み方は、本当に、心の底から嬉しそうだった。
あの冷たくて薄暗い白鷺家の屋敷では、どんなに贅沢なドレスを着ていても、どんなに高級なお菓子を食べていても、決して見られなかった最高の笑顔。
誰の視線も気にせず、心から自由を、子供のように楽しむ、年相応の少女の瑞々しい顔。
それを見た瞬間、ナギサは、つい先ほどまで死にかけていたことなどどうでもよくなるくらい、胸の奥がじんわりと、熱い灯火が灯ったように温かくなるのを感じた。
(……あぁ。連れて来て、本当に良かったな)
ただ、手を繋いで、怖いものに乗って、一緒に笑い転げた。
普通の恋人たちなら誰でもやっている、たったそれだけのことなのに。
どうして自分の胸が、こんなにも、痛いほど嬉しいのだろう。
夕暮れの遊園地の賑わいの中で、ナギサは愛おしそうにミアを見つめながら、その横顔を瞳に焼き付けていた。
ガタ、と音がして、ついに登り詰めたレールの先が途切れる。
「うわあああああっ、ちょっと待ってマジで高い――っ!?」
「きゃああああああっ!!」
鼓膜を引き裂くような絶叫と共に、ジェットコースターが重力から解き放たれ、一気に垂直に近い角度で急降下した。
内臓がふわりと浮き上がるような、凄まじい浮遊感。
猛烈な風の刃が二人の髪を乱暴に攫っていく。
上下左右の視界が滅茶苦茶に揺れ動き、重力とスピードの暴力の中で、恐怖の悲鳴と純粋な笑い声がマーブル模様のように入り混じる。
「ナギサ! 顔! 顔が凄いことになってるわよ!」
「 喋ってる余裕あるならちゃんと前見てください!! 舌噛みますよ!」
「無理っ、ふふっ、速すぎて息が……っ、あはははっ!」
レールに沿って激しい急旋回。
そこからの予測不能な連続急降下。
身体が右へ左へと派手に振り回されるたび、限界突破した二人の声が、夕闇の始まりを告げる夜空へと溶けていく。
車輪とレールが擦れ合う音に笑い声も叫び声も掻き消されているはずなのに、どうしてか二人だけの会話は聞こえる。
目を開けてる余裕なんて無くても笑っているのだと、隣にいれば感じるものがあった。
そして、数分後。
ようやく減速し、完全に停止したライドから這い出るようにして降りたナギサは、ふらりと近くの壁へ手をついた。
魂が口から半分出掛かっている。
「……生きてる………」
「もう、大袈裟ねぇ。死ぬわけないじゃない」
ミアはまだ興奮冷めやらぬ様子で、頬を紅潮させながら楽しそうに笑い、ナギサの隣へと並んだ。
その表情は、言葉の弾み方は、本当に、心の底から嬉しそうだった。
あの冷たくて薄暗い白鷺家の屋敷では、どんなに贅沢なドレスを着ていても、どんなに高級なお菓子を食べていても、決して見られなかった最高の笑顔。
誰の視線も気にせず、心から自由を、子供のように楽しむ、年相応の少女の瑞々しい顔。
それを見た瞬間、ナギサは、つい先ほどまで死にかけていたことなどどうでもよくなるくらい、胸の奥がじんわりと、熱い灯火が灯ったように温かくなるのを感じた。
(……あぁ。連れて来て、本当に良かったな)
ただ、手を繋いで、怖いものに乗って、一緒に笑い転げた。
普通の恋人たちなら誰でもやっている、たったそれだけのことなのに。
どうして自分の胸が、こんなにも、痛いほど嬉しいのだろう。
夕暮れの遊園地の賑わいの中で、ナギサは愛おしそうにミアを見つめながら、その横顔を瞳に焼き付けていた。