クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした

「七瀬さん」

「はい」

「君が怪盗ムーンとして動いてきたこと、今回で終わりにしてほしい」

こくりと、頷く。

「その代わり……生徒会で困りごと相談箱を作ろうと思っている。手伝ってくれませんか」

「え……」

「君には、人の痛みに気づく力がある。それを、ルールの中で使ってほしいんです」

ずっと敵だと思っていた人が、今、私に向かって手を差し出している。

翼くんが、私の隣で小さく頷いた。

凛ちゃんが、こぶしをぐっと握った。

「……はい。やらせてください」

御影先輩の口元が、ほんの少しゆるんだ。



「美月ちゃん」

職員室を出ると、凛ちゃんが隣に来た。

「お疲れさま」

「うん。……ありがとう、凛ちゃん。江藤先輩に連絡してくれて」

「当たり前じゃん」

凛ちゃんが、ぎゅっと私の腕を掴んだ。

「美月ちゃんの最後の夜、悲しい終わり方にはさせたくなかった」

「凛ちゃん……」

「私たち、これからも友達だよね?」

「うん。ずっと」

「それじゃあ今度、遊びに行こうね」

凛ちゃんが、えへへと笑って手を振った。

「じゃあ私、先に帰る。二人とも、おやすみ!」

凛ちゃんの足音が廊下に響いて、遠ざかっていった。
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