クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした
「七瀬さん」
「はい」
「君が怪盗ムーンとして動いてきたこと、今回で終わりにしてほしい」
こくりと、頷く。
「その代わり……生徒会で困りごと相談箱を作ろうと思っている。手伝ってくれませんか」
「え……」
「君には、人の痛みに気づく力がある。それを、ルールの中で使ってほしいんです」
ずっと敵だと思っていた人が、今、私に向かって手を差し出している。
翼くんが、私の隣で小さく頷いた。
凛ちゃんが、こぶしをぐっと握った。
「……はい。やらせてください」
御影先輩の口元が、ほんの少しゆるんだ。
*
「美月ちゃん」
職員室を出ると、凛ちゃんが隣に来た。
「お疲れさま」
「うん。……ありがとう、凛ちゃん。江藤先輩に連絡してくれて」
「当たり前じゃん」
凛ちゃんが、ぎゅっと私の腕を掴んだ。
「美月ちゃんの最後の夜、悲しい終わり方にはさせたくなかった」
「凛ちゃん……」
「私たち、これからも友達だよね?」
「うん。ずっと」
「それじゃあ今度、遊びに行こうね」
凛ちゃんが、えへへと笑って手を振った。
「じゃあ私、先に帰る。二人とも、おやすみ!」
凛ちゃんの足音が廊下に響いて、遠ざかっていった。