クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした

翼くんは黙ったまま、窓の外をじっと見ている。その横顔が、月明かりに照らされて少しだけ赤くなっているのが見えた。

それから、ゆっくりとこちらを向いた。

「俺も」

「え……?」

「俺も、ずっと言いたかった。怪盗ムーンとしての美月も、図書委員の美月も。……俺は、君の全部が、好きだ」

翼くんの、少し震えた声。

透明人間だった私を、翼くんはずっと見ていてくれた。

顔が一気に熱くなって、視界がじんわりと潤む。指先までじんじんして、うまく動かせない。

だけど、胸の奥から込み上げてくる嬉しさが、体中をポカポカと温めていく。

「……うれしい」

ぽろりとこぼれた言葉と一緒に、口元がひとりでに緩んでしまうのを止められなかった。

翼くんが照れくさそうに笑って、そっと私の手に自分の手を重ねた。

伝わってくる体温が、驚くほど温かかった。

しばらく、二人とも何も言わなかった。
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