クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした
第五話 偽物と本物
文化祭が終わって五日。
十一月に入った、火曜日の朝。
いつものように登校すると、昇降口の掲示板に人だかりができていた。
何だろう?
近づいてみると、一枚の貼り紙があった。
『怪盗ムーンに騙されました!
十月二十八日(金曜日)、怪盗ムーンが「困っている人のために預かる」と言って、お父さんが初めて買ってくれた腕時計を預けました。
「明日返す」と約束されましたが、返ってきません。
腕時計を持ち逃げされました。
怪盗ムーンは、泥棒です! 信じないでください!
──二年三組 宮本健真』
息が止まりそうになった。
腕時計……? 預かった?
そんなこと、していない。
私は、誰かの大切なものを持ち逃げなんてしない。
周りの生徒たちが、ざわざわと話している。
「怪盗ムーンって、そういうことする人だったの?」
「えー、信じてたのに」
「やっぱり泥棒じゃん」
指先が、冷たくなっていく。
誰がこんなことを……。
そのとき、ぽんと肩を叩かれた。
振り向くと、翼くんが立っていた。
「美月、大丈夫?」
「翼くん……」
「これ、美月じゃないよね」
翼くんが、私を見て言う。
「美月は、そんなことしない。俺は信じてる」
その言葉に、鼻の奥がツンとなった。
「ありがとう」
「誰かが、美月の名前を使ってる。偽物だ」
翼くんが、貼り紙を見据える。
「一緒に、犯人を見つけ出そう」
「うん」