クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした
教室に入ると、クラスメイトたちの視線が痛かった。
ひそひそと話す声が、耳に入ってくる。
「もしかして、七瀬さんって怪盗ムーンなんじゃない? ほら、美月って名前だし」
「……あ。月ってこと?」
「だからいつもこそこそ動き回ってるのかも」
自分の席に着くと、机の上に小さなメモが置かれていた。
『泥棒』
たった二文字。
でも、お父さんとお母さんがつけてくれた大切な名前まで否定されたみたいで、胸の奥が鋭く痛んだ。
こんな気持ち、知ってる。
大切なものを「ただの紙切れ」と言われたあの日と、同じだ。誰かの言葉で、自分の全部を否定される感覚。
私は、メモを黙って握りつぶした。
今まで、怪盗ムーンとして誰かを助けてきた。なのに昼間の私は、まだ誰かの机の陰にいる。
夜と昼が、うまく繋がらない。
「美月ちゃん、気にしないでね」
凛ちゃんが、隣に座って言ってくれた。
「私は、美月ちゃんのこと信じてるから」
「……ありがとう」
凛ちゃんの真っ直ぐな目を見て、唇をきゅっと引き結ぶ。
絶対に、犯人を見つけてみせる。