クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした

昼休み。私と翼くんは宮本くんに話を聞くため、二年三組の教室に向かった。

宮本くんは、サッカー部の副部長。真面目で責任感が強い、と凛ちゃんから聞いたことがある。

「宮本くん、ちょっといい?」

翼くんが声をかけると、宮本くんは疲れた顔で振り向いた。目の下にクマができている。

それでも、私たちをちゃんと見てくれた。責任感の強い人が、怒りをこらえているときの目だ。

「何が聞きたいんだよ」

「怪盗ムーンと会ったとき、どんな様子だったか、詳しく教えてほしいんだ」

「……先週の月曜日。放課後、体育館の裏で」

宮本くんが、うつむいたまま答える。

「黒いパーカーとマスクの奴が、俺の名前を呼んだんだ。『あなたが探している参考書なら、私の手元にある。悪意ある誰かに持ち去られる前に保護した』って」

「それで……信じちゃったの?」

「ああ。あいつ、こう言ったんだ。『あなたが本当に持ち主か確認したい。もし大切にしている物があるなら、一時的に預からせてほしい。明日、参考書と交換で返す。それが怪盗ムーンのルールだ』って」

宮本くんの声が、低くなる。

「俺、本当に参考書を探してたし。怪盗ムーンは、今まで困ってる人を助けてきたから……信じちゃったんだよ」

宮本くんが、悔しそうに顔を上げた。

「サッカーで初ゴールを決めた日の記念に、父さんが買ってくれた腕時計を渡しちゃったんだ」

「その人、どんな様子だったか覚えてる?」

私は、一歩前に出た。
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