クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした
出品者名は「hono123」。評価件数はゼロ。出品履歴もこれ一件だけ。
「今回、フリマアプリを初めて使った人間だ。慣れてない」
「プロフィール欄に、何か書いてある」
私は画面を拡大した。
『中学生です。使わないので、出品します』
「『中学生』って、正直に書いてる。急いで出品したから、確認が甘かったんだね」
翼くんが、画面を指でなぞった。
私は出品日をもう一度確認した。十月二十九日。宮本くんから腕時計を騙し取ったのが二十八日。その翌日に出品している。
「一晩で出品してる。追い詰められていたんだ」
私は、画面を見つめながら胸がちくりとした。
初めてアプリを使ってまで、お金が必要だったのかな。
「それより、気になることがあるんだ」
私は翼くんを見た。
「この数日、図書委員の活動中に、足元を確認しながら歩く一年生を見たことがある。時計も何度もチェックしてた。宮本くんが言ってた癖と、ぴったり一致してる」
「誰なの?」
「出品者名の『hono』が名前だとすれば、確かめたいことがある。名簿を見てもいい?」
翼くんはスマホで学校のサイトにアクセスし、委員一覧を開いた。
図書委員の欄を見ると、一年生の名前の中に「小野田ほのか」という名前があった。
「ほのか……hono」
「一致する!」
私の指が、画面の上で止まった。
小野田ほのかちゃん。小柄で、おとなしい印象の一年生。委員会の活動日になると、廊下の端をそっと歩いてくる。
床の段差を確かめるように足元を見ながら歩くのが、いつもの癖だ。
「明日、確かめに行こう」