クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした
翌日の放課後。私と翼くんは、図書委員の活動時間に合わせて図書室に向かった。
小野田さんは、返却された本を棚に戻す作業をしていた。小柄な背中。作業しながら、何度も時計を確認している。
私は翼くんと目を合わせた。翼くんがこくりと頷く。
「小野田さん」
私が声をかけると、小野田さんの肩がびくっと強張った。
振り向いた顔が、一瞬で青くなった。目が泳いで、出口へ向かう素早い視線。
「逃げなくていいよ」
私は、できるだけ静かに言った。
「話を聞かせてほしいだけだから」
小野田さんは、唇をきゅっと結んで動かなかった。
「腕時計のこと、知ってるよ」
私がそう言った瞬間、小野田さんは顔を伏せた。
「……ごめんなさい」
かすかな声だった。
しばらく、誰も口を開かなかった。夕焼けの光が、窓から斜めに差し込んでいた。
「どうして、こんなことをしたの?」
私の問いに、小野田さんはすぐには答えなかった。床を見つめたまま、指先で制服のすそをぎゅっとつかんでいる。