クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした
少しして、小野田さんはスマホを取り出した。
「これ、消します」
震える指でフリマアプリを操作して、「出品を取り消す」ボタンを押した。しばらくして、画面から銀色の腕時計の画像が消えた。
それを見届けると、彼女は肺の中の空気をすべて出し切るように、深く長いため息をついた。
「腕時計、手元にある?」
「……はい。ずっと、スカートのポケットに」
差し出された手のひらには、あの腕時計があった。毎日、罪悪感と一緒に登校していたのだろう。
「これ、先輩が持っててください」
私は小野田さんから、腕時計を受け取った。その重みを確かめるように、両手で包み込む。時計は驚くほど冷たかった。
「……わかった。明日の放課後、一緒に謝りに行こう」
翼くんが、私の背中をポンと叩く。
一人じゃない。明日も、翼くんがそばにいてくれる。それだけで、少し勇気が湧いてきた。