クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした
第六話 三人の怪盗
偽物騒動が解決して、一ヶ月。
十二月に突入し、冬の足音が近づいていた。
校庭の木々は葉を落とし、冷たい風が廊下を吹き抜ける。
放課後の図書室。窓から差し込む冬の短い日差しのなか、隣で本を読んでいた翼くんがふっと顔を上げた。目が合うと、彼が小さく頷く。
私の秘密を共有する相棒。その存在が、冬の図書室を少しだけ温めていた。
そんな穏やかな日々が、あの全校集会で一変した。
*
月曜日の全校集会。体育館に、全校生徒が集まった。
冷えた空気のなか、壇上に立ったのは生徒会長・御影玲央先輩。
「みなさん、聞いてください」
その声が、体育館に響く。
私は、列の後ろで息を呑んだ。
「最近、この学校で『怪盗ムーン』と名乗る人物が、夜の校舎に無断で入り込んでいます」
体育館中が、ざわつく。
「怪盗ムーンって、あの?」
「困ってる人を助けてるって聞いたけど」
「でも、夜に学校に入るのはダメだよね」
生徒たちの声が、波のように広がる。御影先輩は、手を上げてそれを止めた。
「確かに、怪盗ムーンは困っている人を助けてきたかもしれません」
先輩の声が、ひとつ低くなる。
「しかし、どんな理由があっても、ルール違反は許されません。夜間の無断侵入は、校則違反。発覚すれば、停学処分もあり得ます」
停学処分という言葉が、肩にずしりとのしかかった。
「今日から、校内の見回りを強化します。怪盗ムーン──必ず、この手で捕まえてみせる」
彼の鋭い瞳が、全校生徒の列のなかから、私一人を探し出そうとしている気がした。