クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした

翌日の放課後。翼くんの作戦が実行された。

翼くんは生徒会室で御影先輩と資料を整理しながら、体育館周辺の防犯ライトが夜間に作動している話をさりげなく持ち出した。

どんな会話が交わされたか、翼くんがあとで教えてくれた。

「先輩は最初、半信半疑だったみたい。でも、根拠を具体的に話したら、見回りルートを変えることにしたって」

「本当に?」

「うん。ただ……」

翼くんが、眉をひそめる。

「完全に信じたわけじゃないと思う。あの人は、そんなに簡単に動く人じゃない。少なくとも今夜、図書室への注意は薄れるだろう。でも一晩だけだ」

窓の外では、夕闇が校舎を飲み込もうとしていた。



水曜日の放課後。私は一人で図書室に残っていた。

ノートを開き、そこに記された記録をなぞった。

莉奈先輩のミサンガ、ひなのちゃんのリボン、さくらちゃんの濡れ衣……。

私は……本当にみんなを守れたのかな?

そのとき、図書室の重いドアがゆっくりと開いた。

逆光のなかに立っていた人影を見て、全身が固まった。

御影先輩だった。

「七瀬さん、少し時間をいただけますか」

逃げ道はなかった。先輩は私の前に立つと、一枚の写真を机に置いた。

「正直に聞きます。君が、怪盗ムーンですね?」

写真には、夜の闇に紛れる黒いパーカーの人物が写っている。

「体格、身長、君によく似ている。そして……」

先輩が、一歩詰め寄る。

「怪盗が現れた翌朝、君はこの『星の王子さま』を必ず手に取っている。……どうですか?」
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