クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした

どうしよう。このままじゃ、翼くんや凛ちゃんまで……。

御影先輩は、翼くんの作戦を見抜いていた。だから、見回りルートを変えると見せかけて、直接ここに来たんだ。

やめるべきだ、という声が頭の中で繰り返される。

だけど、やめたとして、私は何者になるんだろう。

怪盗ムーンになる前の私は、教室の隅で消えていくだけの「透明人間」だった。

誰かの笑顔を守るために夜を駆けることが、私にとっての「生きている証」だったかもしれない。

それを手放したら──優衣ちゃんへの誓いを、自分で裏切ることになる。

だけど、翼くんや凛ちゃんを危険に巻き込む権利が、私にはあるんだろうか。

答えは出なかった。窓の外の空が、少しずつ暗くなっていった。
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