クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした

『怪盗ムーン様へ。

担任の森川先生に、祖母の手紙を没収されました。

進路のことで悩んでいて、授業中にこっそり読んでいたら見つかってしまいました。

祖母は、今年の春に亡くなりました。

最期に残してくれた手紙には、「自分の道を信じて進みなさい」というメッセージが書かれていました。

来週、進路面談があります。

親は、進学校に進んでほしいと言っています。

だけど、私は美術の道に進みたい。

祖母の手紙を読み返して、勇気をもらいたいんです。

どうか、取り戻してください。

──三年一組 江藤(えとう)千咲(ちさき)


私は、手紙から目が離せなかった。

授業中にこっそり読んでいたら、没収された。

優衣ちゃんの手紙と、同じだ。

あのとき、先生に「ただの紙切れ」と言われた。取り戻せなかった。ゴミ袋を漁って、泥だらけになって泣いた。

江藤千咲先輩は今、あのときの私と同じ場所に立っている。

私は、手紙をじっと見つめた。

「……行く」

「美月ちゃん……」

凛ちゃんが、心配そうな表情になる。
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