クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした
「でも、大丈夫。明日の金曜日は、先生たちの大きな会議が別の学校であるんだ。ほとんどの先生は夕方には学校を出るし、残っている先生も、夜七時までには帰るように言われているみたいだよ」
「じゃあ、職員室が空になるチャンスがあるんだね」
凛ちゃんが身を乗り出した。
「うん。ただ、森川先生だけは、進路指導の準備で少し残るって言ってたらしい。そこを凛ちゃんが引き止めてくれている間に、美月が中に入るんだ」
「十五分で手紙を見つけて、出るんだよね。頑張るよ」
「頼む。一番の問題は、御影先輩がどこにいるか」
翼くんが、生徒会室の掲示板で確認した見回り計画のメモを開く。
「今週の金曜の夜は、先輩が旧棟から始めるルートだ。職員室に来るまで、二十分はある。美月、職員室の鍵は開けられる?」
「うん」
私が頷くと、翼くんが顔を上げた。
「もし先輩が近づいてきたら、すぐに美月に知らせる。そのときは、迷わず引いて」
「わかった」
三人で顔を見合わせた。緊張が、空気を張り詰めさせる。
「大丈夫」
翼くんが、私の肩に手を置いた。
「俺たち三人なら、きっと乗り越えられる」
「そうだよ」
凛ちゃんが、力強く頷いた。
私はひと呼吸置いてから、二人のほうへ手を差し出した。翼くんと凛ちゃんが、それぞれ自分の手を重ねる。
三人の手が、重なった。
その感触がずっしりと頼もしくて、私はもう一度、前を向けた気がした。