クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした
作戦会議が終わり、三人で図書室を出た。廊下には、誰もいない。
昇降口で靴を履き替えて、外に出ると冷たい夜気が頬を刺した。
「それじゃあ、また明日ね」
凛ちゃんが手を振って、先に帰っていった。
私と翼くんの、二人きりになる。
「美月」
翼くんが、立ち止まった。
「なに?」
翼くんは、ポケットから小さなカイロを取り出した。
「はい」
「え……」
「手、冷たくなってる。明日、風邪でも引いたら困るだろ」
翼くんは、カイロを私の手のひらに置くと、さっと離した。
じわりと広がるぬくもりが、指先から腕の奥まで伝わってくる。
「……ありがとう」
「明日、絶対に無事に終わらせよう」
「うん」
翼くんは、そのまま歩き出した。特別な言葉も、手を繋ぐこともない。
手のひらのカイロが温かくて、それだけで十分だった。
翼くんと別れて、空を見上げる。
月が、しんと冷えた空に光っていた。
明日、最後の夜が来る。でも、一人じゃない。
私は、そっと拳を握りしめた。