クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした

『森川先生へ。

私は美術科のある高校に行きたいです。だけど、親は反対しています。

なので、「わが道を進め」という亡き祖母の手紙に励まされてます。

でも、祖母の言葉を「逃げの口実」にしてしまいそうで怖いんです。

だから先生、私から祖母の手紙を遠ざけてください。

自分の言葉で、親と話したいんです。

江藤千咲』

指先が冷たくなった。

嘘でしょ……。

千咲先輩は、自分で手紙を預けたの?

理不尽に奪われたんじゃなくて?

それじゃあ、怪盗ムーンへの依頼は、いったい誰が……。

まさか──。

嫌な予感がした、そのとき。

「美月、逃げろ! 御影先輩がそっちに向かった!」

翼くんの声が、イヤホン越しに耳に飛び込んできた。

廊下から足音が近づいてくる。

まずい!

封筒と手紙を持ったまま、窓へ向かおうとした、その瞬間。

ガラッ!

職員室のドアが勢いよく開いた。

振り返ると、御影先輩が鋭い眼差しで立っていた。

「やはり来ましたね、怪盗ムーン」

「……っ」

窓への道が、完全に塞がれている。

どうしよう……逃げるか、立ち向かうか。
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