クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした

ふと頭の中で、怪盗ムーンの三つのルールが浮かんだ。

誰かの大切な宝物しか盗まない。人を傷つけない。必ず持ち主に返す。

でも今夜の私は、誰かの宝物を盗んでいない。千咲先輩の手紙は、千咲先輩自身が預けたものだった。

このまま窓を蹴って逃げることはできる。でも、それは怪盗ムーンのやり方じゃない。

私は、立ち止まった。そして、振り返った。

「はい。来ました」

封筒を手に持ったまま、御影先輩を見る。

「……逃げないんですか?」

「逃げません」

御影先輩の目が、わずかに揺れた。

そのとき──廊下から足音が続いた。

ガラッ!

扉が開き、翼くんが飛び込んできた。続いて凛ちゃんも。凛ちゃんは先生への相談の途中で、急いで抜け出してきたようだった。

「美月ちゃん!」

「大丈夫か」

「二人とも……来ちゃダメ!」

このままじゃ、二人まで巻き込んでしまう。

「日向くん、春野さん。君たちも関わっていたのですか?」

御影先輩の目が、より一層鋭くなる。
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