クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした
翼くんが、私のそばに並んで立った。
「美月は、誰かのために動いていた。それだけです」
凛ちゃんも、私の隣に来た。
「美月ちゃんが悪いことをしたなんて、思ってません」
目の奥が、じわりと熱くなる。
こぼれそうになる涙を、奥歯を噛んで押し止める。
泣かない、最後まで。月のマークを胸に、ここに立っていたかった。
私はマスクに手をかけた。指先が、少し震えている。
このまま、顔を隠したまま終わりたくなかった。怪盗ムーンじゃなく、七瀬美月として、ここに立ちたかった。
私はゆっくりと、マスクを外した。
廊下から、もう一人の足音が聞こえた。扉が開き、現れたのは森川先生だった。
「七瀬……さん?」
「……はい」
先生は、私の顔を見て一瞬だけ目を見開いた。
図書委員の七瀬美月が、怪盗ムーンだった。
先生の頭の中で、ばらばらだったものがひとつにつながっていくのが、表情の変化からわかった。
御影先輩が、私に近づいてくる。
「七瀬さん。一つ、聞かせてほしい」
「なんですか」