クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした
「この依頼の手紙を書いたのが誰か、君はもう気づいているはずだ」
先輩の声が、低く響く。
私は、手の中の封筒を見つめた。
「……やっぱり、先輩が書いたんですね」
御影先輩は、頷いた。
「ああ。君が誰かのために必ず動くことは、分かっていたので」
「どうして……そこまで」
「生徒会長として、ルールを破る者を放っておくわけにはいかないからです」
彼はきっぱりと言い切る。
「君を捕まえるために、江藤千咲の名前を使って依頼の手紙を書いた。江藤さんとは同じクラスで、彼女が進路で悩んでいることは知っていたから」
「……それじゃあ、千咲先輩は何も知らなかったんですね」
「ああ。彼女は関係ない。僕がひとりでやったことです」
先輩の言葉が、冷たい刃のように胸に突き刺さった。
──ひどい。
手のひらに、じわりと汗がにじんだ。
御影先輩は、私の正体を引きずり出すためだけに、千咲先輩の切実な悩みを「エサ」にしたんだ。
やりきれない怒りと、信じていた正義が裏切られたようなショックで、視界がちかちかと揺れる。
私は、手の中にある二通の紙を強く握りしめた。