冷徹な天才医師は泣けない彼女を溺愛する

第七章 告白

 十一月に入った。
 病棟の窓から見える街路樹が、一週間の間に赤く染まった。朝の空気がいよいよ冷たくなって、廊下の窓に結露が光るようになった。
 私の日常は、相変わらずだった。
 朝の申し送り。回診。処置。記録。先生が廊下で足を緩めて「昨夜は眠れたか」と聞く。業務の話をして、それぞれの仕事に戻る。
 川沿いの散歩が、月に数回の習慣になっていた。
 特別な言葉が交わされるわけではなかった。ただ、歩いた。川の音を聞きながら、時々話し、時々黙った。先生の手が私の手に触れることが、当たり前になっていた。
 でも、形はまだ、なかった。
 「付き合っている」と言える関係かどうかが、まだはっきりしていなかった。橘さんには「もう付き合ってるでしょ」と言われていたが、先生から正式な言葉はなかった。私からも言い出せていなかった。
 それでよかった、と思う部分もあった。
 でも、今夜みたいに先生の手の温かさを感じながら川沿いを歩いていると、形があった方が、もっと安心できる気もした。
 人間の感情というのは、贅沢なものだ。
 一つが叶うと、次を求める。
 でも、それが生きているということなのかもしれない。

 その週の金曜日、先生から夜にメッセージが来た。
「明日、時間があるか」
「あります」
「十時に正面玄関で」
 土曜日の朝十時。
 珍しかった。今まで先生から「明日」という前日予告が来たのは、初めてだった。だいたい当日の連絡だった。
「どこへ行くんですか」
「明日言う」
 相変わらずだ、と思いながら、私は「わかりました」と返した。
 その夜、何を着ていこうか少し考えた。
 考えた、という事実に、少し驚いた。以前の私は、服装に迷うことがなかった。感情がなかったから、着るものへの好みが薄かった。でも今は、先生と出かけるとなると、少しだけ、ちゃんとしたいと思う。
 これも感情のなせる業だ、と思いながら、クローゼットを眺めた。

 翌朝、十時少し前に正面玄関に向かった。
 十一月の朝の空は、高く澄んでいた。薄い雲が西の方に流れていて、その向こうに青空が広がっていた。冷たい空気が、頬に当たった。
 先生はすでに来ていた。
 白衣ではなかった。濃紺のコートに、シンプルなセーター。仕事以外の服を着た先生を見るのは、まだ慣れない。病院の先生と、病院の外の先生が、同じ人だということが、毎回少し不思議だった。
「来たか」
「はい。今日はどこへ」
「乗れ」
 先生が駐車場を指した。
 車に乗ると、先生はナビに住所を入れた。私には見えなかった。
「どこですか」
「着けばわかる」
 車が走り出した。
 いつも通りの沈黙が流れた。でも今朝の沈黙は、いつもと少しだけ違う密度があった気がした。先生の横顔が、どこかいつもより、緊張しているように見えた。
「先生、今日はどうしたんですか」
「どうしたとは」
「前日から教えてくれるのは、初めてです。行き先を秘密にしているのも、初めてです」
「そうか」
「何かあるんですか」
 先生が少し間を置いた。
「……ある」
 短く言った。それ以上は言わなかった。
 私はそれ以上聞かなかった。
 窓の外の景色が流れていった。街の中心部を抜けて、少しずつ建物が少なくなって、広い空が見えてきた。
 一時間ほど走ったとき、先生が車を止めた。
 小高い丘の上にある展望スポットだった。東京都内とは思えないほど緑が多く、眼下に川が光っていた。観光地というほどではないが、地元の人が散歩に来るような場所らしく、ベンチが数脚置いてあった。
「こんな場所があるんですね」
「以前、患者が話していた場所だ。退院後にここへ来たいと言っていた。それで覚えていた」
 先生らしかった。患者の言葉を記憶していて、それをこういう形で使う。
 二人でベンチに腰を下ろした。
 眼下に、秋の景色が広がっていた。色づいた木々と、光る川と、遠くの街並みと、そのさらに向こうに、今日は富士山の白い頭が見えた。
「綺麗ですね」
 私は言った。
「そうだな」
 先生も言った。
 並んで座って、しばらく、景色を見た。
 先生の肩が、私の肩のそばにあった。触れそうで触れない距離。その距離を、今日は縮めてくれるだろうか、と思いながら、私は富士山を見ていた。
「白石」
「はい」
「今日、ここに来たのは理由がある」
「はい」
 先生が、前を向いたまま言った。
「俺はお前に、言わなければならないことがある」
「……なんですか」
「昨年の冬から、お前のことを考えない日がない」
 静かな声だった。
 私は先生の横顔を見た。
「考えない日がない、とは」
「朝に目が覚めると、今日お前と話せるかを考える。仕事をしているとき、お前がどこにいるかを確認していることに気づく。帰宅すると、今日お前がどんな顔をしていたかを思い出している」
 先生は、ゆっくりと言った。
「それが何なのかを、長い間わからなかった。感情に名前をつけることが、俺には難しかった。でも今日、ここに来てはっきりさせようと思った」
 私は、胸の中で何かが静かに大きくなっていくのを感じた。
「白石」
「はい」
「お前が好きだ」
 先生が言った。
 今まで一度も言われたことのなかった言葉だった。
 「俺も」でも、「そばにいたい」でも、「手放したくない」でもなく。
 「お前が好きだ」という、まっすぐな言葉。
 私は先生の横顔を見た。
 先生の耳が、赤かった。
 十一月の冷たい空気の中で、先生の耳が、確かに赤かった。
「先生」
「なんだ」
「もう一度、言ってもらえますか」
 先生が私を見た。
「……もう一度?」
「はい」
「なぜだ。聞こえていたはずだ」
「聞こえていました。でも、もう一度聞きたいです」
 先生が少し間を置いた。
 眼下に、秋風が吹いて、木々が揺れた。富士山が、雲の向こうに少し隠れた。
「……お前が、好きだ」
 もう一度、言ってくれた。
 今度は少し、声が低かった。それがかえって、先生の照れを表していた。
 私の目が、熱くなった。
「先生」
「なんだ」
「私も、先生が好きです」
「知っている」
「知っているんですか」
「屋上で言っていた」
「そうですね」
「でも改めて聞けて、よかった」
 先生が、静かに言った。
 よかった、という言葉が、今まで先生から聞いた中で一番素直な言葉だった気がした。
「先生、今日改めて言ってくれたのは、なぜですか」
「形にしたかった」
 先生が前を向いたまま言った。
「以前、お前が言った。形になっていないからはっきりしない、と」
「言いましたね」
「それをずっと考えていた。俺が形にしなかったことで、お前が揺れた。あの一ヶ月を、繰り返したくない」
 私は先生の横顔を見た。
「だから今日、言いに来た。白石美月、俺と付き合ってほしい」
 先生が私を見た。
 その目が、今日は、まっすぐだった。冷えてはいたが、今日だけは、その奥に温かいものが透けて見えた。
 私は先生の目を見た。
 返事を考える必要はなかった。
「はい」
 言った。
「はい、先生のことが好きです。先生と付き合いたいです」
 先生が、少し息を吐いた。
 安堵の息だった。先生が安堵する、という場面を、今まであまり見たことがなかった。
「そうか」
「そうか、ですね」
「……なんと言えばいい」
「嬉しい、でいいです」
「……嬉しい」
 先生が言った。
 その一言が、秋の空の下に、静かに広がった。
 富士山が、雲の間から顔を出した。
 私は先生の横顔を見た。
 先生がこちらを向いた。
 距離が、縮まった。
 先生の手が、私の手の上に置かれた。川沿いの散歩とは違う、今日は迷いのない重さで。
 指が、絡まった。
 温かかった。
 先生の手が、温かかった。
 空の下で、二人でそのまま、しばらく景色を見た。
 何も言わなかった。でも、何も言わなくてよかった。
 形になった。
 私たちは、今日から、正式に、二人になった。

 告白された翌週の土曜日、先生から「また出かけるか」と連絡が来た。
 今度は行き先を教えてくれた。
「水族館に行く。お前が以前、綺麗だと言っていたから」
 水族館。
 以前、先生と行ったことがあった。大きな水槽の前で、先生が「何か感じるか」と聞いた。私が「綺麗だと思います」と答えたら、先生が「綺麗という言葉が出たことに気づくか」と言った。
 あの日のことを、先生が覚えていた。
 それだけで、出かける前から、少し胸が温かかった。

 駅で待ち合わせた。
 先生はグレーのコートを着ていた。白衣ではない先生に、まだ毎回少し驚く。でも今日は「慣れない」という感覚よりも、「先生だ」という温かさの方が先に来た。
「来たか」
「はい」
 先生が電車の方向を向いて歩き始めた。私はその隣に並んだ。
 並んで歩く。ただそれだけのことが、今日は少し違った。先生が私の隣を歩いている、という事実の重さが、昨日より少し増していた。
 付き合っているから。
 その言葉が、頭の中で静かに光っていた。
 電車の中、先生は外の景色を見ていた。私も外を見た。でも時々、先生の横顔をちらりと見た。
 先生が、視線に気づいたのか、こちらを向いた。
「何だ」
「なんでもないです」
「見ていた」
「見ていませんでした」
「嘘だ」
 私は少し笑った。先生が「嘘だ」と言った。いつもなら「俺は嘘をつく理由がない」と言う側なのに。
「先生って、電車に乗るとき、いつも外を見るんですね」
「そうかもしれない」
「何を見ているんですか」
「何も。景色を眺めているだけだ」
「好きな景色はありますか」
 先生が少し考えた。
「川が見えるとき、少し落ち着く」
「川が好きなんですね」
「好き、というほどではないが」
「川沿いをよく選ぶのは、そのせいですか」
「……そうかもしれない。気づいていなかった」
 先生が、自分のことを自分で知っていくような、そんな間があった。
 感情を閉じていた人間が、少しずつ自分の内側に気づいていく。それが今の先生だった。
 私も同じだ、と思った。感情を取り戻してから、自分の好きなものや嫌いなものが、少しずつわかってきた。
 二人で、まだお互いのことも、自分のことも、発見している途中だった。

 水族館は、平日より混んでいたが、薄暗い館内は静かだった。
 大きな水槽の前に立つと、魚の群れが旋回していた。青い光が、私たちの顔に映った。
「また来たな」
 先生が言った。
「はい。前と同じ水槽ですね」
「お前が綺麗と言った水槽だ」
「覚えていたんですね、ちゃんと」
「覚えている」
 私は水槽を見た。
 以前見たときと、同じ魚たちだった。でも今日は、以前より鮮やかに見えた。感情が戻った今の方が、色がはっきりしている気がした。
「今も綺麗だと思うか」
 先生が聞いた。
「はい。前より、もっと」
「なぜ」
「感情が戻ったから、色が見えるようになった気がします。前は「綺麗」という言葉を出すのが精一杯だったけど、今は綺麗という気持ちがちゃんとあります」
 先生が水槽を見たまま、少し言った。
「それが、正しい状態だ」
「先生は今、水槽を見てどう思いますか」
「……静かだと思う。魚が音を立てない」
「それは感想ですね。感情じゃなくて」
「そうかもしれない」
「先生は、綺麗とは思いませんか」
 先生が少し間を置いた。
「……思う。ただ、それより、隣にお前がいることの方が、気になる」
 私は先生を見た。
「それは、感情ですよ」
「そうか」
「はい。立派な感情です」
 先生が少し、水槽の方に視線を戻した。
 耳の後ろが、薄暗い館内でも少し赤いのが、わかった。
 私は先生の隣で、また少し笑った。
 先生が感情に気づくたびに照れる、という発見が、今日の宝物になっていた。

 水族館を出た後、近くのレストランで昼食をとった。
 窓際の席に、向かい合って座った。
 先生はメニューを手に、淡々と選んだ。「これでいい」と言って、あとは私のオーダーを待った。感情を持った人がよくやる「悩んでいるうちに決まらない」ということが、先生にはなかった。
「先生って、食事を選ぶとき迷いませんね」
「栄養バランスと好みで決めれば、迷う必要がない」
「好みがあるんですね」
「ある」
「何が好きですか」
「……魚が多い和食が好きだ。肉は疲れる」
「肉が疲れる、という感覚があるんですね」
「食べた後に少し重い。それを疲れると言うかどうかは、わからないが」
 先生が、自分の感覚を丁寧に言葉にしようとしていた。以前の先生ならこういう質問に答えなかったと思う。「善処する」と言ってから、先生はこういう場面で少し立ち止まるようになった。
「先生が和食好きとは、知らなかったです」
「お前は何が好きだ」
「私は……最近、スープが好きです。温かいものが、嬉しくなりました」
「感情が戻ってからか」
「そうかもしれません。温かいものが温かい、とちゃんと感じられるようになったから」
 先生が少し間を置いた。
「白石」
「はい」
「お前が何かを感じるたびに、俺は少し、嬉しくなる」
 向かい合って座った先生が、静かに言った。
 嬉しくなる、という言葉が、先生の口から出た。
「どうして嬉しくなるんですか」
「俺がお前に感情を戻させようとした。それが、こういう形で続いているから」
「……先生は、責任を感じているんですか」
「責任、というよりは」
 先生がコーヒーを一口飲んだ。
「お前が何かを感じるたびに、俺が最初にそれをもたらした人間であることを思い出す。それが、どこか誇らしい」
 誇らしい、という言葉が、今日一番意外な言葉だった。
「先生が、誇らしいという感情を持つんですね」
「初めて知った」
「今気づいたんですか」
「今言葉にした。感じていたのは前からかもしれない」
 私は先生の顔を見た。
 先生がこちらを見ていた。
 向かい合って、目が合った。
 今まで何度も目が合ってきたが、今日は少し違った。今日の目の合い方は、先生が「付き合っている」という意識の上で私を見ていた。
 それがわかって、私は少し顔が熱くなった。
「先生、見すぎです」
「見ていていいだろう。付き合っているんだから」
 先生は、あっさり言った。
 「付き合っているんだから」という言葉を、先生がそんなに自然に言った。
 私は窓の外を見た。頬が熱かった。
 先生の方から「付き合っているんだから」という言葉を聞くとは、思っていなかった。
「……そうですね」
 私は窓の外を見たまま言った。
「こちらを向け」
「少し待ってください」
「なぜだ」
「顔が、少し、熱いんです」
 しばらく間があった。
「……そうか」
 先生の声が、今日一番柔らかかった。
 窓の外の街を見ながら、私は思った。
 付き合っているということが、今日から始まった。
 これからどんな時間が来るのかを、今の私はまだ知らない。
 でも、先生が隣にいることが、今日の私には、十分すぎるほどだった。

 十二月になった。
 去年の十二月は、三田村さんが亡くなった月だった。美月が初めて泣いた月だった。先生が頭に手を置いてくれた夜があった。カフェで温かいものを飲んだ夜があった。
 あれから、一年が経とうとしていた。
 今年の十二月は、違う顔をしていた。
 病棟のナースステーションに、また小さなクリスマスツリーが飾られた。スタッフたちが少しだけ浮き立った空気をまとっていた。先生は相変わらずそういう雰囲気に乗らなかったが、ツリーを見て「邪魔だな」とは言わなかった。それが先生の受け入れ方だと思った。
 橘さんが「今年は先生と何かするの?」と聞いてきた。
「先生次第です」
「白石さん、最近本当に丸くなったね。以前は何があっても、先生次第なんて言わなかった」
「そうですか」
「以前は、特に何も、か、問題ありません、しか言わなかった。今は、先生次第って笑って言える。大分違うよ」
 橘さんの言葉が、少し胸に染みた。
 変わった。私は変わった。
 感情を取り戻して、先生と出会い直して、揺れて、選んで、変わった。
 それを「丸くなった」と言うのなら、それでいい。

 その週の金曜日の夜、先生から連絡が来た。
「明日、来られるか。泊まりがけで」
 泊まりがけ。
 私は少し、スマートフォンを持ったまま動きが止まった。
 今まで先生と泊まりで出かけたことは、なかった。
「……どこへですか」
「山側の温泉地に行こうと思っている。一泊だ」
 温泉。
 先生が温泉を選ぶとは、思っていなかった。
「先生、温泉が好きなんですか」
「好きというほどではないが、冬は体が温まる。お前も疲れているだろうから」
 またこういう言い方だ。私の体を気にかける、でも「気にかけている」とは言わない先生の言い方。
 でも今は、それが先生らしくて温かかった。
「……わかりました、行きます」
「荷物は少なくていい。着替えだけで十分だ」
「先生、他に必要なものはありますか」
「お前がいれば十分だ」
 送られてきたその一文を、私は何度か読み返した。
 「お前がいれば十分だ」
 先生がこういう言葉を送ってきた。
 以前の先生なら絶対に言わなかった。変わった。先生も、少しずつ、変わっていた。
 私はしばらく、その文を見つめてから、返信した。
「私も、先生がいれば十分です」
 送信してから、少し照れた。
 先生からすぐに返信が来た。
「そうか」
 三文字だった。
 でも今夜は、その三文字が、何より温かかった。

 翌日の朝、先生の車に乗って、山へ向かった。
 都心を抜けると、景色が変わった。広葉樹が葉を落として、枝だけになった木々が空に向かって伸びていた。山が近づくにつれて、道の脇に残雪が見えた。
「雪がありますね」
「昨日、降ったらしい」
「先生、雪は好きですか」
 少し間があった。
「……以前は、何も思わなかった。最近は、少し、好きかもしれない」
「なぜですか」
「あの夜を思い出すから」
 あの夜。
 屋上で、初雪が降った夜。先生が「俺も」と言った夜。
「私も、最近は雪が怖くないです」
「以前は怖かったのか」
「二十三歳の冬が、雪の夜だったから。雪を見るたびに、その夜を思い出していました」
「今は」
「今は、屋上の夜を思い出します。そっちの方が、ずっと最近の記憶だから」
 先生が少し間を置いた。
「それは、よかった」
 先生が「よかった」と言った。また、素直な言葉だった。
 窓の外に、山が近づいてきた。空が白くなって、また雪が降り始めた。
 小さな雪粒が、ガラスに当たった。
 私は窓の外を見ながら、思った。
 去年の十二月の初雪は、あの屋上だった。今年の十二月の雪は、先生の車の中で見ている。
 来年の十二月の雪は、どこで見るだろう。
 その「来年」が、今の私には当たり前のように想像できた。
 来年も先生と、雪を見ている。それが当たり前に思えることが、今の私の幸せだった。

 宿は、山の中腹にある小さな旅館だった。
 離れが数棟だけある、静かな宿だった。部屋に入ると、広い縁側の外に、雪を積んだ庭が広がっていた。遠くに山の稜線が見えた。
「いい部屋ですね」
「広すぎるかもしれない」
「先生が選んだんですよね」
「ああ。静かな方がいいと思って」
 先生が選んだ宿に、私たちは二人でいた。
 日常とは全然違う空間に、先生と二人でいる。
 その事実が、少し、現実感がなかった。
 廊下で足音を立てながら「昨夜は眠れたか」と聞く先生が、今は部屋の縁側から雪の庭を見ている。
 でも、先生は先生だった。同じ横顔だった。
「先生、温泉に行きましょう」
「ああ」
 夕暮れ前に、露天風呂に向かった。
 宿の露天風呂は、山に向かって開いていた。湯気が白く立ち上り、その向こうに雪の山が見えた。お湯の中に入ると、体の芯から温まった。
 温かかった。
 体が温まることが、こんなに気持ちよかったのかと、今更気づいた。感情がなかった頃は、温泉に来ても「体温が上がった」という事実しか認識しなかった。でも今は、温かさがただ温かく、気持ちよかった。
 一年前には、想像もしていなかったことだった。

 夕食は、部屋で食べた。
 仲居さんが料理を運んできて、二人分の膳が並んだ。
 向かい合って座った。先生が杯を持った。
「乾杯するか」
「はい」
 杯が、静かに触れた。
 お酒を飲みながら、料理を食べた。
 先生は黙って食べていたが、時々「これはうまい」と言った。先生が食事の感想を言うのは、珍しかった。
「先生、美味しいですか」
「ああ。魚の味付けが、上品だ」
「上品、という言い方をするんですね」
「感想を言葉にしようとしている」
「善処していますね」
「ああ」
 先生がそう言って、また料理に向かった。
 私も食べながら、思った。
 先生と向かい合って、温かい料理を食べて、外には雪が降っている。
 なんでもない夜かもしれない。でも今の私には、これが特別だった。
 感情があるということは、こういう当たり前を、特別と感じられることだ。

 夕食が終わり、片付けが済んで、部屋に二人きりになった。
 縁側の外に、夜の庭が広がっていた。雪が止んで、空に星が出ていた。
 先生が縁側に出て、星を見ていた。
 私も隣に立った。
 冷たい空気が、肌に当たった。でも先生が隣にいるから、寒くはなかった。
「星が多いですね」
「山だからだろう」
「先生は、星を見るとどう思いますか」
「……遠い、と思う」
「遠い」
「あそこまで行けないという意味ではなく、距離がある、という感覚が好きだ。近くにあるものより、遠くにあるものの方が、想像が広がる」
 先生が、珍しいことを言った。
「先生、詩人みたいなことを言いますね」
「そうか? 事実を言っているだけだが」
「事実が詩になっているんですよ」
 先生が少し、私を見た。
「お前もそういう言い方をするようになったな」
「感情が戻ってから、言葉が増えました。先生のおかげです」
「俺のおかげかどうかはわからない」
「先生のおかげです。先生が壊してくれたから」
 先生が少し間を置いた。
「……壊す、か。ずいぶん乱暴な言い方だったな」
「でも正確でした」
「そうか」
 二人で星を見た。
 先生の手が、私の手を包んだ。
 大きな手だった。温かかった。
「白石」
「はい」
「お前と一緒にいて、俺は少しずつ変わった気がしている」
「どんな風に変わりましたか」
「感情がある方が、生きている気がする。以前は、感情は不要だと思っていた。今は、感情があることで見えるものがある、とわかった」
「先生も、感情を取り戻したんですね」
「俺の場合は、得た、という感覚に近い」
「得た」
「お前に会うまで、持っていなかったのかもしれない」
 先生の言葉が、星の光の中に溶けた。
 私は先生の横顔を見た。
 先生が、私を見た。
 二人の間の距離が、縮まった。
 先生が私の方を向いた。
 先生の手が、私の頬に触れた。
 冷えていた頬に、先生の手が当たった。温かかった。
「白石」
「はい」
「好きだ」
 今夜、二度目の言葉だった。
 でも、今夜の方がもっと、近くで届いた。
「私も、先生が好きです」
 先生が私の顔を見ていた。
 冬の夜の星空の下、縁側に二人で立っていた。
 先生が、ゆっくりと額を私の額に寄せた。
 触れた。
 温かかった。
 先生の体温が、伝わってきた。
 二人で、しばらく、そのままでいた。
 外の空気は冷たかった。でも先生の温もりが、私の全部を温めていた。
 感情があるということは、こういうことだ、と思った。
 誰かの温もりを、ちゃんと受け取れること。
 誰かに、ちゃんと触れられること。
 九年間、感じることができなかったことが、今夜は全部、確かに届いていた。
 先生の腕が、私の肩に回った。
 星空の下、二人は寄り添っていた。
 何も言わなくてよかった。
 ただ、先生がそばにいた。
 それだけが、今夜の全部だった。

 その夜、眠りにつく前、私は先生の顔を見た。
 先生がこちらを見ていた。
「眠れるか」
「はい、眠れます」
「そうか」
 先生が言った。
「先生」
「なんだ」
「今日、来てよかったです」
「俺もだ」
 短く、でもはっきりと、先生は言った。
 私は目を閉じた。
 先生の体温が、傍らにあった。
 こんなに誰かのそばで眠ることが、こんなに安心できるとは、知らなかった。
 感情があるということは、安心を感じられるということだ。
 誰かのそばを、安全だと感じられるということだ。
 私は、ゆっくりと眠りに落ちた。
 夢を、見た。
 温かい夢を。
 誰かが傍らにいる夢を。
 目が覚めたとき、先生はまだそこにいた。

 翌朝、目が覚めると、部屋の障子が白かった。
 雪の光だ、とわかった。昨夜また降ったのだろう。
 先生は既に起きていた。縁側に座って、雪の庭を見ていた。浴衣の上にコートを羽織った、珍しい格好だった。
「先生、起きてたんですね」
「早く目が覚めた」
「何時ですか」
「六時半だ」
「早いですね」
「外が明るかったから」
 私も縁側に出て、先生の隣に座った。
 庭に、夜の間に降った雪が積もっていた。白く、静かで、誰の足跡もなかった。
「綺麗ですね」
「そうだな」
 先生が言った。
「先生、今日は綺麗と思いましたか」
「ああ、思った」
「以前は思わなかったですか」
「景色に対して感想を持つことが、以前は少なかった」
「今は?」
「……お前がそばにいると、感想が出やすい気がする」
「なぜですか」
「わからない。ただ、お前が「綺麗ですね」と言うと、俺も確認するからかもしれない」
 先生が、自分で考えながら話していた。
「先生は、私のことを見てから、感情が増えたんですか」
「そうだと思う。俺はもともと感情を閉じていたが、お前を見て、感情がないことが損失だと初めて感じた。それが最初の感情だった」
「損失だと感じた、というのが」
「ああ。お前の空白を見て、俺が初めて感じた本物の感情だった。だから俺は、お前が感情を取り戻すことで、俺自身も変わっていった」
 私は先生の横顔を見た。
「先生と私は、お互いに変えあったんですね」
「そうかもしれない」
「それは、不思議なことですね」
「感情がない二人間が、互いに感情を増やしていった。確かに不思議だ」
 私は雪の庭を見た。
 誰の足跡もない白い雪が、広がっていた。
 でも二人が縁側に座っているから、ここには確かに誰かがいる。
 (形のないものでも、確かにある)
 感情がそうだ。目に見えないけれど、確かにある。先生と私の間にある何かも、今は目に見えない。でも確かにある。
「先生」
「なんだ」
「今日、帰ったら、病院ではいつも通りですよね」
「ああ」
「先生はいつも通りで、私もいつも通りで」
「そうだ」
「でも、こうして二人でいることが、私の日常にある」
「そうだ」
 私は先生を見た。
「それが、嬉しいです」
 先生が私を見た。
「俺も」
 二文字だった。
 でも今朝の「俺も」は、雪の庭と朝の光の中で、今まで一番、温かかった。

 帰り道の車の中、先生は少し眠そうだった。早起きしたからだろう。
「先生、眠いですか」
「少し」
「運転、大丈夫ですか」
「問題ない」
「どこかで休憩しますか」
「サービスエリアで一度止まる」
 先生が律儀にそう言って、しばらくしてサービスエリアに入った。
 コーヒーを買って、駐車場の端のベンチに座った。
 先生がコーヒーを飲みながら、遠くの山を見ていた。
 私も飲みながら、先生を見た。
「先生、山を見ると何を思いますか」
「大きい、と思う」
「大きい」
「あれだけの体積が、自然に存在している。人間が作ったものではない」
「それが良いんですか」
「人間が手を加えていないものは、そのままだ。変化するが、意図しない変化をする」
「人間は、意図して変化しますか」
「しようとする。できることもあればできないこともある」
「先生は、意図して変化しましたか」
 先生がコーヒーカップを両手で包んで、少し考えた。
「……半分は意図した。半分は、お前によって変えられた」
「変えられた、ですか」
「ああ。俺が意図していなかった変化だ。お前に出会わなければ、こうはならなかった」
 その言葉が、胸に温かく落ちた。
「先生は、変えられたことを、どう思いますか」
「……悪くない、と思っている」
「悪くない」
「それ以上の言い方を、今はまだ持っていない。でも、悪くないは、俺の言い方での「良い」だ」
 私は先生の横顔を見た。
「わかっています」
「そうか」
「先生の言い方は、全部わかります。今は」
 先生が私を見た。
「全部?」
「全部は言いすぎかもしれませんが、大体わかります」
「……なぜだ」
「ずっと先生を見てきたからです」
 先生が少し間を置いた。
「それは、嬉しいのかもしれない」
「かもしれない、ですか」
「まだ全部の感情を言語化できていない」
「練習中ですね」
「ああ」
 私は立ち上がった。
「帰りましょう、先生」
「ああ」
 先生も立ち上がった。
 二人で車に戻った。
 エンジンがかかって、車が走り出した。
 窓の外に、山が遠くなっていった。
 先生の手が、ギアを変えた後で、私の手の上に置かれた。
 走りながら、先生が片手で私の手を握っていた。
 運転中だから、何も言わなかった。
 でも手の温かさが、全部を言っていた。
 私は窓の外を見ながら、胸の中が満ちていくのを感じた。
 満ちる、という感覚が、今日は確かにあった。
 満ちる感情を持てることが、今の私の証明だった。

 年が明けた。
 一月の病棟は、静かだった。
 正月の間も病院は動いていて、私も先生も働いていた。年末年始の休みが短い分、医療の世界には別の時間の流れがある。でも今年の元日、私は先生から短いメッセージを受け取った。
「今年もよろしく」
 それだけだった。
 でも先生からの「今年もよろしく」が届いたことが、今年の元日の一番の出来事になった。
 「こちらこそ、よろしくお願いします」と返すと、「ああ」と来た。
 先生らしかった。

 二月になった。
 バレンタインが近づいて、橘さんが「朝霧先生にチョコあげないの?」と聞いてきた。
「……先生、そういうのが好きだとは思えませんが」
「でも付き合ってるんでしょ?あげなよ」
「先生に聞いてみます」
 その夜、先生に「バレンタインに何か渡してもいいですか」とメッセージした。
 しばらくして返信が来た。
「チョコは甘すぎる。他のものを頼む」
 他のもの。
 私は少し考えてから、市販のドライフルーツの詰め合わせを選んだ。
 バレンタイン当日、廊下で先生に渡した。
「チョコじゃないんですね、先生が言ったので」
「そうか」
 先生が袋を開けて中身を確認した。
「ドライフルーツか」
「甘さが控えめで、保存もきくので」
「……よく考えた」
 先生が、そのまま白衣のポケットに入れた。
「食べないんですか」
「後で食べる。仕事中だ」
「そうですね」
 先生が歩き始めて、三歩ほど行ったところで振り返った。
「白石」
「はい」
「ありがとう」
 先生が「ありがとう」と言った。
 廊下で、他のスタッフも少し遠くにいる状況で、先生が「ありがとう」と言った。
「どういたしまして」
 私は自然に答えた。
 先生が少し、口元を動かした。
 笑み、と呼べるかどうかの、でも確かに柔らかいものが、先生の顔に浮かんだ。
 それを見た橘さんが、後でナースステーションで「今の見た!?」と小声で言ってきた。
 私は「何のことですか」とごまかしながら、胸の中で少し笑った。

 三月になった。
 桜の季節が、また来ようとしていた。
 去年の春、私は桜を初めて「綺麗だ」と感じた。今年の春は、先生と一緒に見たいと思っていた。
 ある夜、先生から「土曜日、時間があるか」と来た。
「あります」
「花見をする」
 花見、という言葉が先生から来るとは思っていなかった。
「先生が花見を提案するんですね」
「お前が去年、桜を見て初めて綺麗だと思ったと言っていた。今年は一緒に見たいと思った」
 また、先生が私の言葉を覚えていた。
 覚えていて、行動に変えた。
 それが先生の愛情の形だった。
「はい、行きます」
 土曜日、先生と二人で近くの公園に行った。
 桜が満開だった。白とピンクの花が、青空を背景に揺れていた。
 並んで歩いた。
 桜の花びらが、時々、肩に落ちた。
「先生、今年は桜を見てどうですか」
「……綺麗だと思う」
「今年は言えましたね」
「お前が感想を言うと、俺も考える。習慣になった」
「良い習慣ですね」
「ああ」
 桜の木の下のベンチに座った。
 青空に桜が映えていた。花びらが風に舞って、白く散っていった。
 先生が、その花びらを一枚、手で受けた。
「先生」
「なんだ」
「今、何を思っていますか」
 先生が、受けた花びらを見た。
「……来年も、ここで見たいと思っている」
「来年も」
「ああ。その次の年も」
 その次の年も、という言葉が、静かに胸に落ちた。
 先生が、来年以降のことを言った。
 私の隣に、来年以降もいるつもりだということを、先生なりの言い方で言った。
「先生」
「なんだ」
「私も、先生と、来年も、その次の年も、桜を見たいです」
「そうか」
「そうか、じゃなくて」
「……嬉しい」
 先生が、言った。
 桜の花びらが、また舞った。
 先生の肩に、一枚落ちた。
 私は手を伸ばして、先生の肩の花びらを取った。
 先生が、その私の手を、そのまま掴んだ。
 指が絡んだ。
 桜の木の下で、二人で座っていた。
 手が繋がっていた。
 空が、青かった。
 桜が、白かった。
 先生が、温かかった。
 私は、その全部を、今この瞬間に感じていた。
 感じることが、今日も、当たり前にできていた。
 それが、今の私の、正しい在り方だった。

 その夜、アパートに帰ってから、私はノートを開いた。
 今日のことを書こうとして、少し考えた。
 書きたいことが、たくさんあった。
 桜が綺麗だったこと。先生が「来年も」と言ったこと。手が繋がっていたこと。空が青かったこと。
 全部書こうとして、でも最後に、一番大切なことだけを書いた。
 「今日、先生と桜を見た。来年も一緒に見ると、先生が言った。私は今、幸せだと思う」
 書いてから、少し驚いた。
 幸せ、という言葉を、自分のために使えた。
 以前の私には、この言葉がなかった。感情がなかったから、幸せという状態がわからなかった。
 でも今日、先生の隣で桜を見て、手を繋いで、来年もここで見たいと思いながら、私は確かに思っていた。
 幸せだ、と。
 ノートを閉じた。
 窓の外に、春の夜が広がっていた。
 去年の春も、この窓から夜空を見ていた。あのとき、星を見て何も感じなかった。
 今夜は、星が少しだけ、温かく見えた。
 感情があることが、当たり前になっていた。
 先生がそばにいることが、当たり前になっていた。
 二つの当たり前が、今の私を作っていた。
 これが、白石美月という人間の、今の正しい在り方だった。
 泣けなかった女が、泣けるようになった。
 感じられなかった女が、感じられるようになった。
 ひとりだった女が、誰かのそばにいるようになった。
 それは、先生のおかげだった。
 先生が壊してくれたから。
 先生がそばにいてくれたから。
 先生が「俺も」と言ってくれたから。
 ありがとう、と思った。
 その気持ちを、明日、先生に伝えようと思った。
 先生は「なぜだ」と言うだろう。私は「全部です」と言おう。先生は「全部とは何だ」と言う。私は「先生がいてくれることです」と言う。先生は少し間を置いて、「そうか」と言う。
 その会話が、もう目に浮かんだ。
 先生のことを、知っている。
 知っているということが、好きということだ。
 私は電気を消して、布団に入った。
 今夜も、温かい夢を見るだろう。
 先生がそばにいる夢を。
 桜が散る春の夜に、私は眠った。
 幸せというものが、今夜確かに、ここにあった。



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