真夜中にハーブティーを、あなたとふたりで
若菜と同じように店内に視線を巡らせたけれど、知っている顔はない。若菜もすぐに「気のせいかな」と言ったので、それ以上は気にせず私たちはファミリーレストランを出た。
カラン、と涼し気な音と一緒に扉を開けると、カウンターの奥にいた隼人くんが「おっ」と眉を上げた。
「いらっしゃい。今日は若菜さんと一緒だったんだ」
「う、うん」
答える笑顔がぎこちないのは、自分でも自覚している。
でも隼人くんはそんな私に気づくことなく、カウンターの奥に入っていった。
「香帆さん」
ふいに隼人くん以外の声で名前を呼ばれ見ると、カウンターの一番奥で加藤さんが手を振っていた。
知り合い? と目で聞いてくる若菜に「隼人くんの前の会社の人」と伝える。
加藤さんからひと席空けた場所に若菜、私の順番で腰掛けた。
ほぼ同じタイミングで店内にいたお客さんがお会計で立ち上がる。
素早く隼人くんが反応し、お会計の準備を始めた。
「加藤さんはハイビスカスゼリーをもう試食しました?」
「香帆さんのほうが年上だから、敬語はいらないよ。それから試食はさっきした。香帆さんにまずいものは食べさせられないからって、それはもう何度も……」
「加藤! 余計なこと言わなくていいから!」
お会計を終えた隼人くんが、私と若菜の前にハイビスカスティを置く。
「来てくれたお礼。今ゼリーも出すからちょっと待っていて」
「何種類作ったの?」
「三種類。どれもいいできだと思っている」
なんだか隼人くんの声がいつもより弾んでいる気がする。
横で加藤くんが「俺のアドバイスのおかげだな」と自慢げに言っていた。
そんな加藤くんを無視するかのように、隼人くんはゼリーの準備に取り掛かる。
「おいしい。ねぇ、このメニュー表にあるコメントって香帆が考えたの?」
優菜がカウンターに置かれているメニュー表を手にする。
そこにはハイビスカスティの写真と一緒に、私が考えたコメントも書かれていた。
コメントは、十日ほど前にスマホで送った文章そのままだ。
『夏にぴったりの酸味が爽やかなハイビスカスティ。レモン汁を入れるとレッドルビーからピンクへと色が変わります。紫外線によるしみやそばかすの予防効果もあり、美肌効果抜群の目にも鮮やかな一杯をどうぞ』
それに加え「夏限定品」の大きな文字が効果的にレイアウトされていた。
「すごい! 夏って感じだ。コメントもデザインもいいね」
若菜が絶賛する。他のメニューも気になるようで、メニュー表をパラパラと捲り始めた。
「これ、いつも隼人くんが作っているの?」
私が聞くと、隼人くんが小さく頷く。
「写真は全部自分で撮っている。デザインは苦手だからいくつか候補を作って知り合いに見てもらっているんだ」
知り合い、というフレーズに心がざわりとした。
もしかして、日本橋で見かけた女性だろうか。
そうしているうちにもう一組も席を立ち、客は私たちだけとなった。
「お待たせ。これが試作品なんだけれど、第一印象はどうかな?」
高さ十センチぐらいのガラスの器に、赤いゼリーがキラッと輝く。
ひとつはレッドルビー色のハイビスカスゼリーと寒天が半分ずつ。
もうひとつはレッドルビーとピンク色が層になった上に寒天があり、最後のひとつは寒天の代わりに生クリームが乗っていた。
「どれも可愛い!」
「ビーチやプールサイドで食べたいかも」
私、若菜の順に感想を口にする。隼人くんがハイビスカスティの色がレモン汁で変わると、若菜に伝えた。
「へぇ、ちょっとレモン汁を入れてみよう」
カラン、と涼し気な音と一緒に扉を開けると、カウンターの奥にいた隼人くんが「おっ」と眉を上げた。
「いらっしゃい。今日は若菜さんと一緒だったんだ」
「う、うん」
答える笑顔がぎこちないのは、自分でも自覚している。
でも隼人くんはそんな私に気づくことなく、カウンターの奥に入っていった。
「香帆さん」
ふいに隼人くん以外の声で名前を呼ばれ見ると、カウンターの一番奥で加藤さんが手を振っていた。
知り合い? と目で聞いてくる若菜に「隼人くんの前の会社の人」と伝える。
加藤さんからひと席空けた場所に若菜、私の順番で腰掛けた。
ほぼ同じタイミングで店内にいたお客さんがお会計で立ち上がる。
素早く隼人くんが反応し、お会計の準備を始めた。
「加藤さんはハイビスカスゼリーをもう試食しました?」
「香帆さんのほうが年上だから、敬語はいらないよ。それから試食はさっきした。香帆さんにまずいものは食べさせられないからって、それはもう何度も……」
「加藤! 余計なこと言わなくていいから!」
お会計を終えた隼人くんが、私と若菜の前にハイビスカスティを置く。
「来てくれたお礼。今ゼリーも出すからちょっと待っていて」
「何種類作ったの?」
「三種類。どれもいいできだと思っている」
なんだか隼人くんの声がいつもより弾んでいる気がする。
横で加藤くんが「俺のアドバイスのおかげだな」と自慢げに言っていた。
そんな加藤くんを無視するかのように、隼人くんはゼリーの準備に取り掛かる。
「おいしい。ねぇ、このメニュー表にあるコメントって香帆が考えたの?」
優菜がカウンターに置かれているメニュー表を手にする。
そこにはハイビスカスティの写真と一緒に、私が考えたコメントも書かれていた。
コメントは、十日ほど前にスマホで送った文章そのままだ。
『夏にぴったりの酸味が爽やかなハイビスカスティ。レモン汁を入れるとレッドルビーからピンクへと色が変わります。紫外線によるしみやそばかすの予防効果もあり、美肌効果抜群の目にも鮮やかな一杯をどうぞ』
それに加え「夏限定品」の大きな文字が効果的にレイアウトされていた。
「すごい! 夏って感じだ。コメントもデザインもいいね」
若菜が絶賛する。他のメニューも気になるようで、メニュー表をパラパラと捲り始めた。
「これ、いつも隼人くんが作っているの?」
私が聞くと、隼人くんが小さく頷く。
「写真は全部自分で撮っている。デザインは苦手だからいくつか候補を作って知り合いに見てもらっているんだ」
知り合い、というフレーズに心がざわりとした。
もしかして、日本橋で見かけた女性だろうか。
そうしているうちにもう一組も席を立ち、客は私たちだけとなった。
「お待たせ。これが試作品なんだけれど、第一印象はどうかな?」
高さ十センチぐらいのガラスの器に、赤いゼリーがキラッと輝く。
ひとつはレッドルビー色のハイビスカスゼリーと寒天が半分ずつ。
もうひとつはレッドルビーとピンク色が層になった上に寒天があり、最後のひとつは寒天の代わりに生クリームが乗っていた。
「どれも可愛い!」
「ビーチやプールサイドで食べたいかも」
私、若菜の順に感想を口にする。隼人くんがハイビスカスティの色がレモン汁で変わると、若菜に伝えた。
「へぇ、ちょっとレモン汁を入れてみよう」